MS-DOS 【Microsoft Disk Operating System】
概要
MS-DOS(Microsoft Disk Operating System)とは、米マイクロソフト(Microsoft)社がかつて開発・販売していたパソコン向けオペレーティングシステム(OS)製品の一つ。1980年代に普及した、いわゆるPC/AT互換機と呼ばれるパソコン製品群で標準的に用いられた。米インテル(Intel)社の8086系(x86系)16ビットCPUで動作するOSで、一度に一つのプログラムのみ実行することができるシングルタスク方式でコンピュータを制御する。表示や操作を文字の入出力によって行うコマンドラインインターフェース(CLI/CUI)を基本とする。
起動するとコマンドプロンプトと呼ばれる入力待ち画面が現れ、キーボードから命令文を打ち込んで指示を与えたり、起動するプログラムを指定したりする。当時普及していたCP/MやUNIXを参考に、ディレクトリを入れ子状に作成できる階層型ファイルシステムや、複数の命令をテキストファイルに保存しておき一括して実行できるバッチファイルなどの機能が採用された。
歴史
1981年にMicrosoft社が米IBM社にパソコン向けOSとして「PC DOS」をOEM提供し、翌年、Microsoft社は同じ製品を「MS-DOS」としてIBM社以外にも提供するようになった。PC DOSおよびMS-DOSはIBM製パソコンおよび他社の互換機(PC/AT互換機)と共に広く普及し、パソコン向け16ビットOSとして事実上の業界標準として圧倒的な市場シェアを獲得した。
日本でも1980年代にNECのPC-9800シリーズなど各社の16ビットパソコン向けに移植され広く普及したが、当時はアプリケーションが直にCPUやハードウェアを制御する仕組みが主流だったため、同じMS-DOS対応ソフトでも異機種間の互換性はほとんどなかった。
当時、パソコンにおける日本語文字の表示は機種ごとに固有の特殊なハードウェアで処理していたが、1990年に日本語表示をソフトウェアのみで可能にする「DOS/V」が開発され、海外メーカー製PC/AT互換機の国内普及のきっかけとなった。当時の名残りで、現在でもWindowsパソコンを「DOS/Vパソコン」と呼ぶことがある。
その後、パソコン向けOSの主流の座は同じMicrosoft社のWindowsシリーズに取って代わられるが、初めて本格的に普及し始めたWindows 3.1までは、OSの基盤として内部的にMS-DOSが組み込まれており、WindowsはMS-DOSの拡張ソフトウェアとして実装されていた。
Windows 95以降はWindowsが単体のOSとして設計され、MS-DOSそのものは排除されているが、現在でも当時の名残りでWindowsのコマンドプロンプト機能のことを以前の名称である「DOSプロンプト」と呼ぶことがある。