PC/AT互換機 【PC/AT compatible machine】

概要

PC/AT互換機(PC/AT compatible machine)とは、米IBM社が1984年に発売したパーソナルコンピュータ「PC/AT」と互換性のあるパソコン製品の総称。パソコン仕様の事実上の標準(業界標準)として広く普及した。日本では「AT互換機」「DOS/V機」などの呼称もよく用いられた。

仕様の多くが公開され、コンピュータメーカーや部品メーカー、ソフトウェアメーカーの多くが互換製品や対応製品を開発・販売したため、事実上の標準仕様として普及した。各社独自仕様のパソコン製品とは異なり、メーカーが異なってもPC/AT互換機の仕様に則っていればソフトウェアがそのまま動作する利点がある。

中央処理装置CPU)に米インテルIntel)社のx86系マイクロプロセッサや他社の互換製品を、オペレーティングシステムOS)として米マイクロソフトMicrosoft)社のWindowsシリーズを用いることが多いことから、俗に「Wintel」(ウィンテル)等と通称されることもあった。

現代ではオリジナルのPC/AT仕様のほとんどが新しい規格群に置き換えられてほぼ残存していない(PC/AT自体との互換性はとっくに失われている)ことや、他の有力なパソコン仕様が米アップルApple)社のMacシリーズくらいしか残っていないこともあり、PC/AT互換機という呼称も廃れつつある。現在では単に「パソコン」「PC」「Windowsパソコン」と言えばPC/AT互換機の末裔のことを指すことが多い。

IBM PC/AT

元祖のPC/ATはIBM社が1984年に発売した、主にビジネス用途向けのパーソナルコンピュータPC)製品である。ATは “Advanced Technology” の略とされ、当時の先進的な機能や仕様が多く盛り込まれた。

CPU中央処理装置)にIntel社の16ビットマイクロプロセッサである80286(モデルにより6~8MHz)を採用し、メインメモリRAM)は256~512KB、内蔵ハードディスク20~30MB)、16ビット拡張バスATバス)、640×350ピクセルの画面に64色中16色を表示可能なグラフィックスサブシステム(EGA:Enhanced Graphics Adapter)などを搭載していた。

標準のOSMicrosoft社からライセンス供与されたPC DOSで、同時期にPC/AT向けに発売された米ロータス(Lotus Development)社の表計算ソフト「Lotus 1-2-3」と共に大ヒットした。

互換機の誕生と普及

IBM社はPC/ATの仕様の多くを公開したため、米コンパック(Compaq Computer、当時)などの新興メーカーがPC/ATと同じソフトウェアが動作する互換機を次々発売し、Microsoft社はPC DOSと同等の製品を自社ブランドのMS-DOSとして提供した。

DOSや1-2-3など人気のソフトを安く高性能のコンピュータで利用できるとあってPC/AT互換機の販売シェアは本家のPC/ATを上回るようになり、パソコン製品の業界標準として広く普及するようになった。特に、ATバスは1988年にIEEEによってISAIndustrial Standard Architectureバスとして正式に標準規格化されている。

ただし、初期のPC/AT互換機の標準仕様としてひとまとまりに語られることの多い諸規格のうち、PS/2ポートVGAVideo Graphics Array)などいくつかはPC/ATのものではなく、IBM社がPC/ATの次に開発・発売したPS/2の仕様を各社が取り入れたものである。

(2019.12.9更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
ホーム画面への追加方法
1.ブラウザの 共有ボタンのアイコン 共有ボタンをタップ
2.メニューの「ホーム画面に追加」をタップ
閉じる