ブートセクタ 【boot sector】 ブートブロック / boot block
概要
ブートセクタ(boot sector)とは、ストレージ(外部記憶装置)内の特殊な記憶領域の一つで、コンピュータの起動用のプログラムや設定情報などが記録されたもの。記憶媒体を分割する最小の記録単位であるセクタ(sector)一つ分(通常は容量512バイト)であるためこのように呼ばれる。かつて一般的だったBIOS(レガシーBIOS)制御のPC/AT互換機(いわゆるWindowsパソコンの大半)で用いられる概念で、2種類のブートセクタがある。一つは媒体内の物理的な先頭セクタである「マスターブートレコード」(MBR:Master Boot Record)、もう一つは媒体内の各パーティションの先頭セクタである「パーティションブートレコード」(PBR:Partition Boot Record)あるいは「ボリュームブートレコード」(VBR:Volume Boot Record)である。
コンピュータは起動時にまずBIOS内の起動用プログラムが実行され、MBR内に記録された起動用プログラムを読み込んで実行する。このプログラムはMBR内のパーティションテーブルを参照し、起動すべきオペレーティングシステム(OS)が記録されたアクティブパーティションのPBRから起動用プログラムを読み込んで実行する。
PBRの起動プログラムは、そのパーティション内に記録されたOSを起動するためのプログラム(2次ブートローダ)を読み込んで実行する。2次ブートローダは起動すべきOSの初期化プログラムを読み込んで実行する。これらの段階を経てOS本体がメモリ上に展開され、起動される。
なお、BIOSの後継で現在主流のUEFIでは、MBRの起動用プログラムに相当する機能をUEFI自身が内蔵しており、起動用パーティションから直接2次ブートローダを読み込んで実行するため、パーティション情報などを記したセクタ領域をブートセクタとは呼ばなくなっている。
ブートセクタ感染型ウイルス
光学ディスクなど可搬型メディア(リムーバブルメディア)を用いる記憶装置も先頭部分がブートセクタになっている場合があり、特に、ハードディスクの普及以前はOSをフロッピーディスクに記録して先頭部分のブートセクタから起動するのが一般的だった。
この仕組みを悪用して、ブートセクタ部分に不正に自らの複製を記録するタイプのコンピュータウイルスを「ブートセクタ感染型ウイルス」(ブートセクタウイルス)という。ブートセクタの内容は起動後のOSのファイルシステムからは直接参照できないため、検知や駆除、修復には特別な仕組みが必要となる。ハードディスクやSSDなど内蔵固定ストレージに感染するタイプのウイルスも発見されている。