Win32 【Win32 API】
概要
Win32(Win32 API)とは、Windowsが対応ソフトウェアに対して標準で提供している機能セットの一つで、32ビットCPU向けに設計・実装されたもの。また、その呼び出し方法を定めた規約の体系(Win32 API)。主に米インテル(Intel)社のx86系32ビットCPUおよび他社の互換製品で動作するよう設計された機能および呼び出し規約を指す。Windows向けソフトウェアの開発者はWin32の提供する機能を呼び出す形でソフトウェアを開発することにより、機種ごとの構成や仕様の違いを気にすることなく、Windowsの動作する環境ならばどこでもプログラムを実行できるようにすることができる。
コンピュータを構成する部品や装置(デバイス)の制御や入出力、ファイルシステムなどストレージ(外部記憶装置)の操作、メインメモリ(RAM)の管理、プロセスやスレッドの制御、ウィンドウシステムやグラフィックス描画および画面表示、通信・ネットワークなど、コンピュータを制御・操作するための基本的な機能を各ソフトウェアに対して提供する。
Win32はCPUの32ビット化に合わせて1994年のWindows NT 3.1(サーバ向け)および1995年のWindows 95(パソコン向け)から導入され、それまで利用されてきた16ビットCPU向けのWin16を置き換えつつ併用されてきた。2001年のWindows XP以降では64ビットCPU向けの「Win64」が導入され、対応するWindowsは「64ビット版」として販売されている。
Win32s
Windowsがアプリケーションソフトに対して提供していた機能セットおよび呼び出し規約(API)の一つで、Win32の縮小版。Windows 3.1では16ビットCPU向けの「Win16」、後継のWindows 95では32ビット向けの「Win32」が標準APIだが、移行期の特殊なAPIとして、両者の共通部分を抽出したWin32sが提供された。
Windows 3.1向けに作られたWin16アプリケーションはWindows 95では動作が不安定で、逆にWindows 95向けのWin32アプリケーションはWindows 3.1では動作しないが、Win32sで開発されたソフトウェアはWindows 95で安定的に実行できる一方、旧式の環境への一定の配慮があればWindows 3.1でもそのまま動作させることができた。
Win16
Windowsがアプリケーションソフトに対して提供していた機能セットおよび呼び出し規約(API)の一つで、16ビットCPU向けのもの。Windows 1.0からWindows 3.1まで標準的に提供され、互換環境はWindows 95/98/Meや初期のWindows NTにも提供された。
Intel社の「8086」から「80286」までの16ビットCPUおよび互換製品で動作するパソコンを主なターゲットにしたAPI群である。それまでこの環境で標準的に用いられてきたMS-DOS(PC DOS)との互換性が重視されている。
MS-DOS時代と異なり、OSのAPIを経由してハードウェアの機能を利用する形の開発手法が確立し、各アプリケーションソフトの機種依存性が大きく緩和された。当初は単に「Windows API」と呼ばれていたが、32ビット版のWin32登場時に旧来のAPIを区別する必要が生じ「Win16」と呼ばれるようになった。