macOS 【Mac OS X】
概要
macOS(Mac OS X)とは、米アップル(Apple)社がパーソナルコンピュータ「Mac」シリーズ向けに提供しているオペレーティングシステム(OS)製品。コンピュータの各種装置の制御やストレージ(外部記憶装置)の管理を行い、同機上で使用される様々なアプリケーションソフトの実行基盤となる。旧世紀のMac OSから基本設計が刷新され、中核部分(カーネル)に業務用コンピュータなどで使われてきたUNIX系OSの技術(NeXT社買収により獲得したOPENSTEP由来のもの)が取り込まれ、動作の安定性、堅牢性が大幅に向上した。
Mac OS時代から定評のある洗練された表示・操作感(ユーザーインターフェース)などは引き継がれ、iTunesやiCloudを通じて同社のiOSデバイス(iPhone/iPadなど)との緊密な連携が可能となっている。初期には旧Mac OS向けのソフトウェアをそのまま動作させる「Classic」環境を内蔵し、旧システム利用者の円滑な移行を促した。
当初はCPU(マイクロプロセッサ)に米モトローラ(Motorola)社(当時)や米IBM社などと共同開発した「PowerPC」を搭載したMac製品(Power Macシリーズや初期のiMac等)向けに設計されていたが、2005年にMacシリーズのCPUを米インテル(Intel)社のx86系製品に切り替える大幅な仕様変更(いわゆる「Intel Mac」への移行)が行われ、macOSも同年のバージョン10.4(Tiger)からIntel CPU向けに切り替えられた。
2020年の「macOS Big Sur 11」では再び対象CPUの切り替えが行われ、「Apple M1」などApple社自社開発のCPU製品(Appleシリコン)が主な動作環境となった。Appleシリコンは英アーム(ARM)社の命令セットに基づいて設計されており、Intel系CPU向けのソフトウェアは動作しないが、移行措置として従来のソフトウェアの大半がAppleシリコン上で動作する変換機能を内蔵している。
主な付属ソフトウェア
OS標準の機能として、ファイルマネージャ(ストレージ管理ソフト)の「Finder」、ランチャ兼タスクバーの「Dock」、ウィジェット動作環境の「Dashboard」、UNIXシェル(コマンドライン)の「Terminal」(日本語版は「ターミナル」)、操作を自動化するスクリプト実行環境の「AppleScript」および「Automator」、バックアップツールの「Time Machine」、ファイルを暗号化して保護する「FileVault」などがある。
また、標準で導入済みのアプリケーションとして、Webブラウザ「Safari」、電子メールクライアントの「Mail」(日本語版は「メール」)、動画や音声を再生する「QuickTime Player」、テキストエディタの「TextEdit」、語学辞書などが引ける「Dictionary」(日本語版は「辞書」)、カレンダー・スケジュール管理の「iCal」、グラフ計算機「Grapher」、写真(画像)の閲覧・管理を行う「iPhoto」、画面にメモ書きを残せる「Stickies」などがある。
Mac OS時代には他社システムとの連携などはあまり考慮されなかったが、macOSにはWindowsのファイル共有サービス(SMB/CIFS)へ接続する機能が内蔵されたり、同社製の追加ソフト(Boot Camp)によりWindowsと切り替えて起動できるようになるなどの変化が見られる。
また、macOS自身の基盤部分がUNIX系OSに由来することもあり、Linuxなど他のUNIX系OS向けのソフトウェアの導入や利用、あるいはこれらのシステムへの接続や連携が容易である。UNIX系が主流のサーバ向けソフトウェアの開発環境などとしても人気が高まっている。
バージョン番号と愛称
バージョン | 名称 | 発表 |
---|---|---|
Mac OS X 10.0 | Cheetah | 2000年9月 |
Mac OS X 10.1 | Puma | 2001年9月 |
Mac OS X 10.2 | Jaguar | 2002年8月 |
Mac OS X 10.3 | Panther | 2003年10月 |
Mac OS X 10.4 | Tiger | 2005年4月 |
Mac OS X 10.5 | Leopard | 2007年10月 |
Mac OS X 10.6 | Snow Leopard | 2009年8月 |
Mac OS X 10.7 | Lion | 2010年10月 |
Mac OS X 10.8 | Mountain Lion | 2012年2月 |
Mac OS X 10.9 | Mavericks | 2013年6月 |
Mac OS X 10.10 | Yosemite | 2014年6月 |
Mac OS X 10.11 | El Capitan | 2015年6月 |
macOS 10.12 | Sierra | 2016年6月 |
macOS 10.13 | High Sierra | 2017年6月 |
macOS 10.14 | Mojave | 2018年9月 |
macOS 10.15 | Catalina | 2019年6月 |
macOS 11 | Big Sur | 2020年6月 |
macOS 12 | Monterey | 2021年6月 |
macOS 13 | Ventura | 2022年6月 |
macOS 14 | Sonoma | 2023年6月 |
macOS 15 | Sequoia | 2024年6月 |
最初のバージョン「Mac OS X 10.0」は2001年に発売された。「X」はローマ数字の10を意味し、旧Mac OSの最終版であるバージョン9の後継でありながら、技術的にはまったく刷新されて新しく生まれ変わったという二重の意味が込められている。バージョン番号も「10.0」から始まり、「10.1」「10.2」と小数点以下の部分がMac OS Xとしての番号を表している。
10.0は “Cheetah” (チーター)、10.1は “Puma” (ピューマ)、10.2は “Jaguar” (ジャガー)といったように各バージョンにネコ科の動物名を表す開発コード名が付けられ、これがそのまま各製品の愛称としても広まった。10.9の “Mavericks” (マーベリックス)からはネコ科動物に代わって同社の所在するカリフォルニア州の地名が付けられている。
名称の変遷
もともと同社はMacシリーズのパーソナルコンピュータが事業の中核だったが、2000年代半ば以降はiPod、iPhone、iPadなどiOSを搭載した携帯端末が爆発的に普及し、事業の中心がそちらへ移った。これを反映して2012年のバージョン10.8 “Mountain Lion” からは正式な製品名称が「OS X」に変更された。
さらに、2016年のバージョン10.12 “Sierra” からは、「iOS」(iPhone向け)、「iPadOS」(iPad向け)、「watchOS」(Apple Watch向け)、「tvOS」(Apple TV向け)など他製品向けOSの名称に揃えて「macOS」に変更された。これらは純粋にブランド戦略上の改称であり、旧Mac OSからMac OS Xのような技術的に大きな再編が行われたわけではない。