UNIX 【ユニックス】
現代では「UNIX」という名称の商標権は業界団体のThe Open Group(オープングループ)が保有しており、同団体の策定した共通仕様「Single UNIX Specification」を満たすと認定されたOSのことをUNIXという。正式にUNIX認証を得ているOSのほとんどは企業が製品として開発・販売しているもので、これを「商用UNIX」と呼ぶことがある。
これ以外に、UNIX風の仕様や操作感、振る舞いのOSが数多くあり、それらを「UNIX系OS」(UNIX-like OS)と呼ぶ。Linuxなど有力なUNIX系OSの多くはオープンソースソフトウェアとして公開されており、誰でも自由に開発に参加したり、入手、使用、改変、再配布などができる。広義には、正規のUNIXシステムとUNIX系OSすべてを含む総称としてUNIXという語を用いることもある。
特徴
UNIXは当初から、異なる機種間の移植性や、複数のプログラムを並行して動作させられるマルチタスク、複数の利用者が一つのシステムを利用できるマルチユーザーなどの特徴を重視して開発されてきた。
基本の操作体系は利用者が文字による指示(コマンド)を打ち込んでプログラムを実行し、実行結果を画面に表示する対話的なCLI(コマンドラインインターフェース)である。パイプやシェルスクリプトなどの連携機能によって単機能のプログラムを組み合わせて複雑な処理をさせる手法が定着しており、巨大な多機能プログラムを開発する手法と対比して「UNIX哲学」と呼ばれる。
初期のUNIXは特定機種向けのアセンブリ言語で開発されていたが、移植性と開発効率を高めるために高水準プログラミング言語の「C言語」が考案され、UNIX本体および対応ソフトウェアの開発で標準的に用いられた。CはUNIXの枠を超えて様々なシステムや分野で広く普及し、多くの派生言語を生み出した。
歴史
1960年代末にベル研究所で大型コンピュータ(メインフレーム)向けの大規模OS「Multics」(Multiplexed Information and Computer Services)の開発に携わっていたケン・トンプソン(Kenneth L. Thompson)、デニス・リッチー(Dennis M. Ritchie)、ブライアン・カーニハン(Brian W. Kernighan)らが中心となり、当時ミニコンピュータと呼ばれた小型コンピュータ向けのOSとしてUNIXの開発が始まった。
複雑で巨大なMulticsのアンチテーゼとして軽量で軽快なOSを目指していたことから、接頭辞「Multi-」(多数の)を「Uni-」(単一の)に置き換えた「Unics」(Uniplexed Information and Computing Service)という名称が考案された。理由は不明ながら程なくして「UNIX」という表記に変更され、これが定着した(発音は同じ)。
1970年代、UNIX System VやBSD(Berkeley Software Distribution)といった初期のUNIXは大学や研究機関で主に教育・研究用として広く普及した。1980年代になるとSunOS/SolarisやAIX、HP-UXといった商用UNIXが台頭し、企業や官公庁などの情報システムの分野でメインフレームからシェアを奪って普及した。
1990年代にはLinuxやFreeBSDといったフリー/オープンソースのUNIX系OSの開発が活発になり、普及が始まったインターネット向けのサーバなどを中心に広まっていった。これらは厳密には商標としての「UNIX」は名乗れない派生OSで「UNIXそのもの」とは区別される。
2000年代にはこうしたUNIX系OSが商用UNIXのシェアをも奪って業務システムでも本格的に採用されるようになり、現在ではスーパーコンピュータからパソコン(macOSなど)、スマートフォン(Androidなど)、デジタル家電や産業機械の組み込みシステムに至るまで、幅広い用途で広く普及している。