ダッシュ 【dash】 ― / ′
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横棒のダッシュ「―」は主に欧米で用いられてきた約物の一つで、「n」の字幅に等しい短めのエンダッシュ(en dash)「–」と、「m」の字幅に等しい長めのエムダッシュ(em dash)「—」の2種類がある。
エンダッシュは欧文で区間や範囲、単語の併置などを表すことが多い。例えば、「2020年から2022年まで」を “2020–2022”と書いたり、「シャノン=ハートレーの定理」を “Shannon–Hartley theorem”と書いたり、「ロンドン・パリ間」を “London–Paris” のように書く。
エムダッシュは文章中で時間の経過を表したり、注釈や副題、引用を表したり、単語やフレーズの後ろに付けて省略を表したりする。日本語ではいずれのダッシュの用法も波ダッシュ「~」で置き換えることができ、そちらの方が浸透している。
国際的な文字コード標準のUnicodeでは、エンダッシュがU+2013、エムダッシュがU+2014に収録されており、日本語文字コードに由来する全角ダッシュはエムダッシュと同一という扱いになっている。他に短いダッシュ「‒」(FIGURE DASH)、二倍角ダッシュ「⸺」(TWO-EM DASH)なども定義されている。
′
文字や記号の右上に付け加えたり、時間や角度の「分」の単位を表す記号などとして用いられる、上部に置かれた斜めの短い線「′」のこともダッシュという。
アメリカ英語では「プライム」(prime)と呼ぶのが一般的で、ダッシュはイギリス英語に由来する呼び方とされる。点を2つ並べた「″」は「ツーダッシュ」(double prime)、3つ並べた「‴」は「スリーダッシュ」(triple prime)という。
数学などでは「A′」のように文字に付け加えて、複製や類似、導出などを表すことがある。幾何学で図形や点などを座標変換したものを (x′, y′) のように表したり、微積分で導関数を 402;′(x) のように表記することがある。
単位記号として用いられることもあり、角度の「度」の下の「分」を表す際に「東経139度45分」を「139°45′E」のように表記したり、時間の「時」の下の「分」を表す際に「2時間45分」を「2h45′」のように表すことがある。いずれの場合も「秒」はツーダッシュ「″」で表す。