組み込みOS 【embedded OS】 エンベデッドOS
概要
組み込みOS(embedded OS)とは、産業機器や家電製品など、マイクロコンピュータを中心としたいわゆる組み込みシステム(embedded system)を制御するオペレーティングシステム(OS)。求められる要件がパソコン向けやサーバ向けとは大きく異なり、少ないメモリ容量やストレージ容量、貧弱な性能のプロセッサや周辺回路、低速な入出力(I/O)や通信機能といった限られた資源でも安定して動作することが求められる。
対象機器に固定的に内蔵・実行されるという性質上、必要な機能があらかじめ決まっており(出荷後に追加・拡張されることはない)、できる限り少ない記憶容量で動作することが好ましいため、ほとんどの機能がモジュール(部品)化され、開発者が不要な機能を極限まで削れるような設計になっている。
また、機械の制御などを行う場合は処理の遅延により不具合や事故が起きることを防ぐため、応答時間が一定の範囲内にあることを保証するリアルタイムOS(RTOS:Real-Time OS)と呼ばれる製品が用いられることが多い。
一方、パソコン向けで重視されるネットワーク機能やマルチメディア機能、ユーザーインターフェースなどは不要か最小限で良い場合が多く、グラフィックス表示などの機能を最初から用意していないシステムも多い。
組み込みOSの種類
よく知られる組み込み専用のOSとして、米アマゾン(Amazon.com)社の「FreeRTOS」や米ウィンドリバーシステムズ(Wind River Systems)社の「VxWorks」、米QNX(QNX Software Systems)社の「QNX」などがある。日本ではTRONプロジェクトから派生した「μITRON」や「T-Kernel」をベースとした製品のシェアが高い。
パソコンやサーバ向けとしておなじみの汎用のOSをベースとした組み込みOSもあり、組み込みシステムの中では比較的性能の高いデジタル家電や車載機器、通信機器などでよく用いられる。例えば、米マイクロソフト(Microsoft)社はWindows CE/Windows EmbeddedシリーズやWindows 10 IoTといった組み込み向けの製品群を提供している。
ルータなどのネットワーク機器では伝統的にオープンソースのBSD系OS(FreeBSD/NetBSD/OpenBSD)がよく使われる。Linuxをカスタマイズして組み込みシステムに用いる「組み込みLinux」も人気が高まっており、スマートフォン向けのAndroid OSなど広く普及している分野もある。