DAT 【Digital Audio Tape】 デジタルオーディオテープ
概要
DAT(Digital Audio Tape)とは、デジタル方式で記録を行う、音声記録用の磁気テープカセットの規格の一つ。高品質の音声を劣化の起きないデジタル信号として記録することができ、主に業務用オーディオ機器で用いられた。DATカートリッジは縦54mm×横73mm×厚さ10.5mmのプラスチック製で、アナログ記録のカセットテープ(オーディオテープ)と同じように磁性体を塗布した薄いテープを2本のリールに巻きつけた構造になっている。
リールをドライブ装置の回転軸に差し込み、一方からテープを繰り出して、もう一方が巻き取ることで表面の特定の箇所を筐体側面の開口部に露出させる。露出部に機器内部の磁気ヘッドを近づけて書き込みや読み出しを行う。テープの長さによって記録時間が異なり、標準モードで15分から180分までのカートリッジがある。
DAT対応のオーディオ機器では、録音時に音声信号をA/D変換(アナログデジタル変換)してデジタルデータに置き換えて記録し、再生時には読み出したデータをD/A変換(デジタルアナログ変換)して音声信号に戻す。
標準モードではサンプリング周波数48kHz(キロヘルツ)、量子化ビット数16ビットのリニアPCM方式で変換を行い、これをステレオ2チャンネル並行に記録できる。CDと同じ44.1kHzでの記録モードや、音質を落とした32kHz/12ビット/ノンリニア方式の長時間記録モードなども用意されている。
歴史
DATの仕様は1985年に業界団体のDAT懇談会によって策定された。デジタル方式のため複製時やテープの摩耗などによる波形の歪みが起こりにくく、CDを超える高音質での記録が可能なことから業務用機器では一定程度の普及が見られた。
一般消費者向けとしては過剰品質で製品が高価すぎ、アナログテープや後に現れたミニディスク(MD:MiniDisc)などの規格に押され、あまり普及しなかった。物理的な仕様は同じながら、コンピュータでのデータ記録に転用できるようにした派生規格として「DDS」(Digital Data Storage)がある。
2000年代中頃にはDAT対応機器が生産終了となり、DATテープカートリッジ、DDS向けカートリッジも2010年代中頃までにすべてのメーカーが撤退、現在新規に生産される機器やテープは存在しないとされる。