ID3タグ 【ID3 tag】
概要
ID3タグ(ID3 tag)とは、MP3ファイル(.mp3)に音声についての情報(メタデータ)を記録する方法を定めたデータ形式。曲名、アーティスト名、アルバム名などを音声データと共にファイルに埋め込んで記録することができる。まったく形式の異なるID3v1系列(v1.0/v1.1)とID3v2系列(v2.2/v2.3/v2.4)があり、前者はファイル末尾に固定長のデータを、後者はファイル先頭に可変長のデータを埋め込む。記録位置が異なるため両者を併用することもできる。
ID3v1
1996年にエリック・ケンプ(Eric Kemp)氏が公表した仕様で、すぐに多くのソフトウェアが採用し、事実上の業界標準として定着した。ファイル末尾に記録する128バイト固定長のデータである。
「TAG」というID3タグ開始を宣言する3バイトの文字列を先頭に、曲名(30バイト)、アーティスト名(30バイト)、アルバム名(30バイト)、日付(4バイト)、コメント(30バイト)、ジャンル番号(1バイト)をこの順に記録する。
曲名などの文字列領域はそれぞれ30バイトずつしか用意されていないため、長い情報は記録できない。最初に規定されたID3v1.0よりも、トラック番号を追加したID3v1.1(1997年発表)の方が普及している。ジャンル番号は曲のジャンルを表す番号で、1番(ブルース)から147番(シンセポップ)までが規定されている。
文字に日本語を使うことはできるが、仕様上は文字コードについての規定も、文字コードを指定・記録する方法も定義されていないため、異なる文字コードを使用するソフトウェアで表示すると文字化けが発生する。
ID3v2
1998年に発表された仕様で、記録する項目(フレームと呼ばれる)を自由に選択でき、データの長さの制約が事実上撤廃された(一項目16MBまで記録できる)。ID3v2.2、ID3v2.3、ID3v2.4の3つが規定されたが、v2.3が最も普及している。
バージョンや全体のデータサイズなどが記された短いヘッダ領域に続けて、フレームと呼ばれる個々の項目を必要なだけ連結した構造になっている。各フレームはフレームIDで識別され、可変長サイズのデータを記録することができる。
フレームは約70種類定義されており、基本的な情報に加えて作詞者や作曲者、収録時間、言語、発売元、著作権情報など様々な情報を記録できる。文字コードについての規定も追加され、v2.3ではUTF-16で、v2.4ではこれに加えてUTF-8での記録に対応した。