オーバーサンプリング【oversampling】
オーバーサンプリングとは?

A/D変換では、目標周波数の何倍もの頻度でサンプリングを行い、デジタルフィルタで不要な帯域の成分を除去した上でデータを間引き、最終的なサンプリング周波数へ落とし込む。D/A変換では逆に、元のデータの間に補間データを挿入して見かけ上のサンプリング周波数を引き上げ、デジタルフィルタで波形を整えてからアナログ信号に変換する。いずれも最終出力に必要な量をはるかに超えるデータを処理することになる。
オーバーサンプリングを用いる主な目的の一つが、折り返し雑音(エイリアシング)の抑制である。サンプリング周波数の1/2にあたるナイキスト周波数を超える成分は折り返して低域に混入し雑音となるが、これを除去するにはアナログローパスフィルタが必要となる。急峻な遮断特性を持つアナログフィルタは設計・製造が難しいが、オーバーサンプリングによってナイキスト周波数を大幅に引き上げると、目的の帯域と遮断すべき帯域の間に十分な余裕が生まれ、特性の緩やかなフィルタで対応できるようになる。
もう一つの目的が量子化雑音の低減である。量子化雑音はサンプリング周波数の帯域全体にほぼ均一に分布する性質を持つ。オーバーサンプリングによって処理帯域が広がると、同じ量の雑音がより広い周波数範囲に分散するため、目的の帯域内に落ちる雑音のエネルギーが相対的に減少する。この効果はノイズシェーピングと組み合わせることでさらに高まる。ΔΣ変調(デルタシグマ変調)方式のA/Dコンバータはその応用例の一つで、CDやハイレゾ音源の再生機器などに組み込まれている。
処理するデータ量はサンプリング倍率に応じて増加するため、計算負荷や消費電力は大きくなる。かつては高級オーディオ機器など用途が限られていたが、半導体技術やデジタル信号処理技術の進歩により実装が容易になり、現在ではスマートフォンや計測機器、通信機器など様々な電子機器に搭載されるA/Dコンバータ・D/Aコンバータの基盤技術として標準的に組み込まれている。