フラッシュメモリ 【flash memory】
概要
フラッシュメモリ(flash memory)とは、半導体素子を利用した記憶装置の一つで、何度も繰り返し書き込みができ、通電をやめても記憶内容が維持されるもの。近年、データを永続的に保存するストレージ(外部記憶装置)製品の記憶素子として急激に普及している。フラッシュメモリは半導体メモリのうち、電源を落としても記録されたデータが消えない不揮発性メモリ(nonvolatile memory)に分類される。電気的に繰り返し自由に消去や再書き込みができる特徴はRAMと同じだが、技術的にはROM(の一種であるEEPROM)に由来するため「フラッシュROM」とも呼ばれる。
素子の構造や動作方式により大きくNAND型とNOR型の二種類に分かれる。最初に開発されたのはNOR型で、バイト単位で高速に読み出しができ、信頼性が高いが、後に開発されたNAND型の方が集積度を高めやすく、書き込みが高速であるという特徴の違いがある。
SLCとMLC
初期のフラッシュメモリはメモリセル(記憶素子)の電荷の有無にデジタル信号の「0」と「1」を対応付ける1ビット記録の素子(SLC:Single Level Cell/シングルレベルセル)が用いられた。後に、セルに投入した電荷量を段階的に識別することで1セルに複数ビットを保存できる素子(MLC:Multi-Level Cell/マルチレベルセル)が開発された。
初期のMLCは4段階識別・2ビット記録だったため、現在でもこれを指してMLCと呼ぶことが多いが、8段階識別・3ビット記録の「TLC」(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)や、16段階識別・4ビット記録の「QLC」(Quad-Level Cell/クアッドレベルセル)も開発されており、MLCはこれら多値記録方式全体の総称を指すこともある。
特徴と用途
フラッシュメモリは磁気ディスクや光学ディスクなどに比べ、半導体素子に電気的にアクセスするためデータの読み書き速度が桁違いに速く、ドライブ装置に可動部がないため動作音もなく衝撃や振動にも強い。
ただし、素子の構造上劣化の進みが速く、初期には数百回程度、近年でも数万回程度の再書き込みによって素子が破損することが知られている。この点をカバーするため、制御回路により書き込み回数を各素子に均等に分散させる「ウェアレベリング」(wear leveling)と呼ばれる処理が行われる。
他方式のメディアに比べ価格も桁違いに高く小容量の製品しかなかったが、2000年代半ば頃からは量産効果や技術の進歩により飛躍的に低コスト化され、磁気ディスクなどの用途を奪う形で普及が拡大している。
主な用途としては、スマートフォンなどの携帯情報端末の内蔵ストレージや、数cm角の薄いプラスチックケースに収めたカード型の記憶媒体である「メモリーカード」、指先大の短い棒型や角型のケースに収めUSB端子でコンピュータに接続する「USBメモリ」などがある。