コーデック 【CODEC】 COder/DECoder / COmpressor/DECompressor
概要
コーデック(CODEC)とは、信号やデータを一定の規則にしたがって符号化したり、逆に、符号化されたデータを元の状態に復号したりする装置やソフトウェアなどのこと。符号化のみを行うものは「エンコーダ」(encoder)、復号のみを行うものは「デコーダ」(decoder)という。最もよく知られるのは、画像、音声、動画など大容量のメディアデータを圧縮したり、圧縮データを元通りに復元(伸張)する装置やソフトウェアで、単にコーデックといった場合はこれを指すことが多い。半導体チップや基板、装置などによって処理を行うものを「ハードウェアコーデック」、コンピュータプログラムとして実装したものを「ソフトウェアコーデック」という。
より一般的には、汎用のデータ圧縮・伸張ソフトウェアのことや、複数の圧縮形式の間で相互に変換するシステム(「コンバータ」「トランスコーダ」とも呼ばれる)、データを(圧縮とは別の目的で)内容を変えずに別の形式に変換したり元に戻したりするシステム、暗号化・復号を行うシステムなどが含まれる。
また、半導体や電子機器の分野では、音声や映像などのアナログ信号を取り込んでデジタルデータに変換したり、データをアナログ信号に変換して出力したりする回路や部品、装置のことをコーデックという場合がある。これらは「A/Dコンバータ」(ADC:Analog/Digital converter)あるいは「D/Aコンバータ」(DAC:Digital/Analog converter)とも呼ばれる。
メディアデータのコーデック
画像や音声、動画などのデータを圧縮・展開するコーデックは、それぞれ対応するデータ形式(圧縮符号化形式)が決まっている。データ形式とコーデックが一対一に対応することが多いため、コーデックのことをデータ形式の名称で呼ぶ(例:「MP3コーデック」→「MP3」)ことも多い。
主な画像形式のコーデックとしてはJPEGやPNG、GIFなどが、音声形式のコーデックとしてはMP3やWMA、AC-3、AAC、aptX、Apple Lossless、FLACなどが、画像形式のコーデックとしてはMPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、H.264、H.265、AV1などがよく知られる。音声データのPCM形式のように無圧縮の形式を扱うソフトウェアなどは変換や圧縮・展開などを行わないが、他の形式に合わせて便宜上コーデックと呼ぶ。
ハードウェアコーデック (hardware codec)
動画や音声の符号化・データ圧縮やその逆の解凍・再生などの処理を行う専用の機器や装置をハードウェアコーデックという。
特定の処理に特化したICチップなどの形で提供され、パソコンの場合はこれが実装された拡張カードの形で利用される。符号化・圧縮のみを行うものは「ハードウェアエンコーダ」(hardware encoder)、復号・再生のみを行うものは「ハードウェアデコーダ」(hardware decoder)という。
ソフトウェアで処理するのに比べ速度は勝るが、あらかじめ処理手順の実装された特定の形式にしか対応できない。一つの形式にしか対応できない製品もあるが、複数のICチップを実装するなどして複数の形式に対応している製品もある。
パソコンで動画データを作成したり再生する場合、かつてはCPUが非力だったためハードウェアコーデックを利用することが多かったが、最近では圧縮形式が多様化したことやCPUの処理性能が向上したことから、ソフトウェアコーデックが用いられることが多い。一般に圧縮の方が処理能力が必要なため、圧縮のみ専用のハードウェアを使い、再生はソフトウェアで行うという形も多い。
ソフトウェアコーデック (software codec)
動画や音声の符号化・データ圧縮やその逆の解凍・再生などの処理を行うコンピュータプログラムをソフトウェアコーデックという。
動画や音声のデータ形式ごとに、動画編集ソフトやメディアプレーヤーのアドオンなどの形で提供される。符号化・圧縮のみを行うものは「ソフトウェアエンコーダ」(software encoder)、復号・再生のみを行うものは「ソフトウェアデコーダ」(software decoder)という。
専用のハードウェア(ハードウェアコーデック)に比べ処理速度では劣るが、ソフトウェアを切り替えれば様々な形式に対応できる。かつては専用のハードウェアを利用してた場面でも、形式の多様化やCPU性能の向上などからソフトウェアコーデックを用いることが増えている。
一般に、メディアデータの再生処理は同じ内容の圧縮処理より負荷が軽く、再生側では圧縮側(制作側)よりも多様な形式に対応する必要があることが多いため、再生環境向けにソフトウェア実装されたデコーダのみが配布されることも多い。