VHS 【Video Home System】
概要
VHS(Video Home System)とは、1976年に日本ビクター(当時)が開発した、民生用ビデオテープレコーダーのカセットおよび映像記録方式の規格。家庭用ビデオテープの標準の座を巡ってソニーのベータマックス方式と激しいシェア争いを展開し、1980年代中頃に事実上の標準となった。記録媒体は長さ188mm×幅104mm×厚さ25mmのカセットに幅12.7mmの磁気テープを巻き付けたリールを収納したもので、テープの長さによって30分から210分までのカセットが製造された。低画質で長時間記録が可能な3倍モード(EPモード)では標準モードの3倍の長さを収録できる。
初期に策定されたアナログ記録の「標準VHS」(ノーマルVHS)と、高画質版の「S-VHS」、デジタル記録が可能な「D-VHS」などの仕様がある。これらの規格は上位互換性があり、新しい規格の製品は古い規格にも対応している。また、VHSデッキでもS-VHS方式で記録されたテープをVHS画質で再生できるものがある。
標準VHSの水平解像度は240本、S-VHS方式では400本である。D-VHSは記録する内容によって解像度が異なる。メーカーによって度重なる機能拡張が行われており、元の規格を超える記録時間・解像度を独自に実現したビデオデッキも開発された。
1980年代には一般家庭にVHS方式のビデオレコーダーが広く普及し、「ビデオテープ」と言えばVHS方式のカセットを指すようになった。テレビ放送の録画や映像作品の販売、レンタルビデオ店など映像流通の社会インフラとして活用された。
21世紀に入るとHDDレコーダーなどのデジタル録画機、DVDやBlu-ray Discなどのデジタル方式の記録媒体に取って代わられ、2010年頃までにはほとんどのメーカーがデッキ生産を終了、カセットテープの生産も2014年頃までに打ち切られた。テープの寿命は20年程度とされ、過去にVHSカセットに録画された映像をDVDなどへ変換するサービスを行っている店舗などもある。
(2023.12.2更新)