スピンロック【spinlock】
概要

プログラム実行における「ロック」(lock)とは、複数のスレッドやプロセスが同時並行で動作する環境において、あるプログラムが特定の資源(メモリ領域など)を使用し始めたとき、処理が完了するまで他のプログラムからのアクセスを禁止する仕組みである。複数の主体が同一資源を同時に操作することによるデータの不整合を防ぐ。
スピンロックでは、資源の解放を待つ側のプログラムがロック状態の確認だけを繰り返す単純なループ処理(ビジーウェイト)を実行し続ける。この確認のループを「スピン」と呼び、名称の由来となっている。待機中もCPUを占有し続けるため、ロック保持時間が長い場合は処理資源を無駄に消費しやすい。
OSによるスレッドの待機・再開(コンテキストスイッチ)にも一定のコストがかかるため、ロック保持時間が極めて短い場合にはスピンロックの方がオーバーヘッドを抑えられる。実装には共有変数に対するテスト・アンド・セット命令(TAS:Test-and-Set)や比較交換命令(CAS:Compare-and-Swap)など、CPUが提供するアトミック命令が用いられ、複数の主体が同時にロック取得を試みても競合を防ぐことができる。
マルチプロセッサやマルチコア環境では、別のコアの処理がロックを保持している場合に短時間で完了することが期待できることが多いため親和性が高い。シングルコア環境では、待機側のスピンが実行を独占してロック解除側の処理が進まなくなるため、原則として使用されない。ロック保持時間が長くなりやすい処理では、待機中にスレッドを休眠させてCPUを他の処理へ割り当てる「ミューテックス」や「セマフォ」などの排他制御方式が選択されることが多い。近年では、一定回数スピンを試みた後に休眠状態へ移行するハイブリッド型の実装も普及している。