KISSの原則 【Keep it simple, stupid.】
概要
KISSの原則(Keep it simple, stupid.)とは、“Keep it simple, stupid.”(簡潔にしておけ、この間抜け!)という格言の頭文字を取ったもの。人工物の設計などに際して可能な限りシンプルさを保つべきであるとする原則を表している。人間、物事をうまくやろうとしたり、良いものを作り出そうとすると、しばしば複雑で込み入った構造や機構、仕組み、やり方を採用してしまいがちだが、複雑さはそれ自体がリスクや価値の毀損となり得るため、シンプルさを追求すべきとする考え方である。
IT分野では、ソフトウェア開発における格言としてよく引き合いに出される。ソフトウェアの価値を高めようとすると、必要性の曖昧な機能をいたずらに追加しようとしたり、仕様や要求が際限なく膨らんでいくものだが、そのことが使いにくさ、品質の劣化、性能の低下(ハードウェアの要求仕様の高度化)、開発・保守コストの上昇などに繋がるため、「シンプルに保つ」ことの重要性が指摘される。
KISSの原則は1960年代に米航空機大手ロッキード(Lockheed)社(当時)で軍用機を開発していたケリー・ジョンソン(Kelly Johnson)氏が航空機設計の原則として技術者たちに訓示した “Keep it simple stupid.” が広まったものとされる。
氏は複雑で洗練された「賢い」手法と対比して、緊急時に簡単な工具で故障箇所を治せるといったことの重要性を「馬鹿でも治せる」というようなニュアンスで “stupid” (頭の悪い、馬鹿げた)と述べたとされるが、いつの間にか “, stupid.” (~しろ、馬鹿者!)という解釈が主流となった。他に、“Keep it short and simple.”(短く簡潔に保て)や “Keep it simple and straightforward.” (簡潔で素直に保て)などのバリエーションもある。
(2021.11.24更新)