組み込みシステム 【embedded system】 エンベデッドシステム / エンベッドシステム
概要
組み込みシステム(embedded system)とは、家電製品や産業機器、乗り物などに内蔵される、特定の機能を実現するためのコンピュータシステム。機器内の各装置の制御や利用者からの操作の受け付けなどを行う。パソコンなどの汎用のコンピュータシステムとは異なり、要求される機能や性能が極めて限定的かつ開発時にあらかじめ特定されており、厳しいコスト上の制限から利用可能な資源にも強い制約がある。
安価なCPU(マイクロプロセッサ)や少ないメインメモリ(RAM)、プログラムを内蔵するROM(読み込み専用メモリ)などで構成され、ストレージや外部入出力(I/O)は存在しないか限定された最低限の装置のみであることが多い。こうした機能を一枚のICチップに実装したマイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)などの専用の半導体製品が用いられることも多い。
組み込みソフトウェア
組み込みシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)は「組み込みOS」(embedded OS)と呼ばれ、少ない資源で安定的に動作するよう汎用OSとは異なる設計の製品が用いられる。
機械の制御では処理の遅延が故障や事故に繋がる危険を伴う場合があるため、応答時間が一定の範囲に収まることを保証する特殊な「リアルタイムOS」(RTOS:Real-Time OS)が用いられることもある。
組み込みOS上で具体的な個別の機器の制御機能を実装したものを「組み込みソフトウェア」(embedded software)という。汎用コンピュータと違い基本的には利用者側で追加や変更を行う必要がないため、主基板などに備えられた書き換えできないメモリ装置(ROM)に固定的に記録し、それを使い続ける場合が多い。
家電や機械にも高度な通信機能や情報機能を搭載したものが増えているため、OSやソフトウェアをフラッシュメモリなど書き換え可能な記憶装置に記録しておき、出荷後にインターネットなどを通じて更新や機能追加などができるように構成されている製品もある。
歴史
1970年代初頭にマイクロプロッサが発明され実用化されるが、最初期の製品の一つである米インテル(Intel)社の「4004」を組み込んだ電卓が日本のビジコン社によって開発・発売された。小規模なコンピュータシステムにより制御される特定用途向けの電気製品という意味では組み込みシステムの先駆けと言える。
1980~90年代にかけてマイクロプロセッサやメモリの高性能化や低価格化が進むと、複雑で高機能な電化製品を中心に、専用回路や機械式の制御機構から組み込みシステムへの移行が進んでいった。
現代ではテレビやビデオレコーダー、デジタルカメラ、プリンタ、コピー機、携帯電話といった情報機器のみならず、洗濯機、炊飯器、自動車、自動販売機、券売機など、身の回りにあるほとんどの機械に何らかの組み込みシステムが搭載されているといっても過言ではない。
スマートフォンのように限りなく汎用コンピュータに近い汎用性や機能性を獲得した製品分野や、自動車のように極めて高度かつ複雑な大規模組み込みシステムが搭載される事例も見られるようになっている。