プラットフォーム 【platform】 PF / P/F
概要
プラットフォーム(platform)とは、台、壇、台地、高台、舞台、演壇、乗降場、綱領などの意味を持つ英単語。ITの分野では、ある装置やソフトウェアを動作させるのに必要な、基盤となる機器やソフトウェア、ネットサービス、あるいはそれらの組み合わせ(動作環境)のことをプラットフォームという。相対的な関係性を表す言葉であるため、具体的に何がプラットフォームとなるかは対象によって異なる。アプリケーションソフトにとってはオペレーティングシステム(OS)やミドルウェア、ライブラリ、言語処理系(ランタイム)などがプラットフォームであるし、OSにとってはハードウェア(コンピュータ本体)や仮想化ソフトなどがプラットフォームとなる。
スマートフォン向けのアプリストアや、クラウドサービス上に構築されたWebアプリケーション、家庭用ゲーム機向けのダウンロード販売サービスのように、特定のネットサービスや通信環境などがプラットフォームの一部を構成する場合もある。
クラウドサービスの一種で、契約者にアプリケーション実行のプラットフォームとなるサーバ環境を貸与し、ネットワークを通じて遠隔から管理できるようにするサービスを「PaaS」(Platform-as-a-Service)という。
マルチプラットフォーム
多くのソフトウェアやハードウェアは対応しているプラットフォームがあらかじめ決まっており、異なるプラットフォーム上で使うことはできないが、同時に複数のプラットフォームに対応する場合もあり、「マルチプラットフォーム」(multi-platform)あるいは「クロスプラットフォーム」(cross-platform)という。
ハードウェア製品の場合、パソコンやスマートフォンの周辺機器などで、外部の機器との接続規格にUSBやBluetooth、Wi-Fiなど汎用的な標準規格を採用することで、その規格に対応した多くの機種に同時に対応できるようにした製品が多く見られる。
機種やOSごとに個別にデバイスドライバなどが必要な場合は対応環境がメーカーが指定したプラットフォームに限定されるが、イヤフォンのようにソフトウェア側の対応が不要な製品やUSBマウスのようにドライバ等が標準化されている場合には、開発元が対応を明示していない環境でも動作させることができる場合がある。
ソフトウェア製品の場合、Java言語のようにプログラムの実行環境があらかじめ複数のプラットフォームに対応しており、これを利用して開発したソフトウェアが複数の異なる環境でそのまま動作することを指すことが多い。各プラットフォームごとに固有の版(Windows版とmacOS版など)が同時に提供されていることを指すこともある。
プラットフォームビジネス
利用者が何らかの活動を行ったり、外部事業者がビジネスを行うための基盤として利用される製品やサービス、システムなどを開発・提供する事業のことを「プラットフォームビジネス」(platform business)という。
利用者が得られる体験が、主に事業者自身ではなく他の利用者や外部の別の事業者によって提供されるようなビジネス形態である。例えば、インスタントメッセンジャー(IM)サービスは他の利用者とのコミュニケーションの仕組みを提供するが、利用者が受け取るメッセージは事業者ではなく他の利用者が送信したものである。
自身が独自に提供するものが乏しい分、事業の初期に利用者や外部の協力事業者を獲得するのは一筋縄ではいかないが、一定の規模を獲得すれば利用者が利用者を呼び、事業者も集まってくる好循環(ネットワーク効果)が生じ、安定的な利益が見込める。
プラットフォーム事業者が基盤の提供のみに専念する必要は無く、外部に開かれてはいるが自身も自社開発の製品やサービスを積極投入する例も見られる。例えば、Windowsの開発元の米マイクロソフト(Microsoft)社はWindows上で最も人気の高いアプリケーションである「Microsoft Office」の開発元でもある。
プラットフォーマー
IT分野でプラットフォームビジネスを手掛け、利用者や外部企業に対してプラットフォーム的な製品やサービスを提供する事業者のことを「プラットフォーマー」と呼ぶことがある。
例えば、パソコンやスマートフォンなどのOSメーカー、家庭用ゲーム機メーカー、SNSやメッセンジャーなどのネットサービス事業者、オンラインモール型の電子商取引(EC)事業者、電子決済事業者、SaaS/PaaS/IaaSなどのクラウドサービス事業者、検索サービス事業者などが該当する。
プラットフォームは利用者や事業者が集まれば集まるほど利便性や市場性が急激に高まるため、多数の小規模プラットフォームが乱立して割拠する状況にはなりにくく、早い段階で市場が有力事業者により寡占化あるいは独占化することが多い。
寡占化した巨大プラットフォーマーは利用者や外部事業者(サードパーティ)に対して優越的な地位となり、対応ソフトや製品の仕様に規定(制約)を設けたり、自社製品・サービスを優先的に利用させたり、流通や決済の仕組みを独占的に提供するなど、大きな影響力を行使することができる。
デジタル分野におけるプラットフォーマー企業は国境を超えて世界的に特定市場・製品を寡占しており、現代社会において国家に比肩する巨大な社会的な影響力を有する。その代表として、いずれも米国企業のグーグル(Google)社、アップル(Apple)社、フェイスブック(Facebook:現Meta)社、アマゾンドットコム(Amazon.com)社の頭文字を繋げた「GAFA」がよく引き合いに出される。マイクロソフト(Microsoft)社を加え「GAFAM」とすることもある。
なお、このような事業者を「プラットフォーマー」と呼ぶのは和製英語で、英語では “platform owner”(プラットフォームオーナー)、“platform holder”(プラットフォームホルダー)、“platform company”(プラットフォーム企業)のように呼称することが多い。
「プラットホーム」表記
日本では鉄道駅などで車両を横付けして人の乗り降りや荷の積み下ろしを行う土台状の設備などを「プラットホーム」あるいは略して「ホーム」と呼ぶが、これも英語の “platform” に由来する外来語である。「フォ」音に馴染みの無い古い時代に定着した外来語であるため「ホーム」表記となっているが、ITの分野では英語の原音に近い「プラットフォーム」表記が好まれる。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
- ウィキペディア 「プラットフォーム」
- 総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト 用語集 「プラットフォーム」
- IDCフロンティア クラウド・データセンター用語集 「プラットフォーム」
- NTT西日本 ICT用語集 「プラットフォーム」
- iTiDコンサルティング 用語集 「プラットフォーム」
- NTTデータ バリュー・エンジニア 用語集 「プラットフォーム」
- エリートネットワーク ビジネス用語集 「プラットフォーム」
- リセマム ひとことで言うと?教育ICT用語 「プラットフォーム」
- SynergyMarketing マーケティング用語集 「プラットフォーム」
- ボクシルマガジン 「プラットフォーム」
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 九州大学 共創学部 入学試験問題「小論文」注釈にて引用 (2022年2月)
- 日本税理士会連合会 国際税務情報研究会「主要国の税務行政の ICT/AI 化の展望と未来の税務専門家制度についての考察」(PDFファイル)にて引用 (2021年1月)
- 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター「プラットフォーム事業者のデータの収集・活用に対する人々の評価 ─CVM による支払い意思額の推計─」(PDFファイル)にて引用 (2019年3月)
- 福岡県宗像市「第4次宗像市情報化計画」(PDFファイル)にて引用 (2015年3月)