イーサネット 【Ethernet】

概要

イーサネット(Ethernet)とは、主に室内や建物内でコンピュータや電子機器をケーブルで繋いで通信する有線LAN(構内ネットワーク)の標準の一つで、最も普及している規格。金属線ケーブルあるいは光ファイバーケーブルを用いて高速に通信することができる。

通信ケーブルを用いてコンピュータや通信機器などを相互に接続する構内ネットワーク(LAN)の標準規格の一つで、ネットワークスイッチなどの集線装置を介して3台以上の機器が相互に通信できるようにする。企業などの組織内や家庭内のネットワーク、データセンターや通信事業者のネットワークで広く普及している。

金属線ケーブル(ツイストペアケーブル)に電気信号を流す方式と、光ファイバーケーブルに光信号を流す方式がある。一般に広く普及しているのは前者で、ケーブルが取り回しやすく装置が安価という特徴がある。光ファイバー規格は長距離を高速に通信することができ、通信事業者の内部ネットワークなど事業用途で普及している。

「イーサネット」という名称は、狭義には最も初期に策定された通信速度10Mbps(メガビット毎秒)の諸規格(10BASE-Tなど)を指すが、現代では、その後に登場した100Mbpsの「Fast Ethernetファストイーサネット」、1Gbps(ギガビット毎秒)の「Gigabit Ethernetギガビットイーサネット」、10Gbpsの「10Gigabit Ethernet10ギガビットイーサネット」などの後継規格の総称を意味するのが一般的である。

接続形態

イーサネットのイメージ画像

初期には一本の通信ケーブルに複数の端末を接続するバス型なども用いられたが、ほとんどの規格では各端末に接続されたケーブルを「ハブ」(hub)や「ネットワークスイッチ」(network switch)などの集線装置で相互に接続するスター型を採用している。

最も単純な構造の集線装置は「リピータハブ」(repeater hub)と呼ばれ、接続された端末から送られてきた信号をすべての端末に機械的に送り返す。このため、物理的にはスター型だが論理的な接続形態はバス型となっている。

現在一般的に使われるのはネットワークスイッチあるいは「スイッチングハブ」(switching hub)と呼ばれる集線装置で、端末から送られてきたフレームの制御情報に記載された宛先を見て関係のあるポートにのみ転送するという処理を行う。不要な通信が流れないため通信効率が高い。

送受信単位

イーサネットではデータを「フレーム」(Ethernet frame)と呼ばれる一定のデータ量の送信単位に分割して送受信する。一つの端末がデータを送信し終えるまで他の端末が待つ必要がなく、多数の機器が同じネットワークで並行して送受信処理を進めることができる。

フレームの先頭には宛先や送信元などを記した「ヘッダ」(header)と呼ばれる制御情報が記載され、続いて送りたいデータ本体を格納した可変長の「ペイロード」(payload)、末尾に4バイト(32ビット)の誤り訂正符号FCSFrame Check Sequence)が格納される。

ヘッダは通信制御のための情報が記載された領域で、先頭から順に宛先MACアドレス(6バイト)、送信元MACアドレス(6バイト)、VLANタグ(4バイト/オプションのため省略可)、データ長(2バイト/古い規格では通信タイプ)となっている。

ペイロードは通常1500バイトまでと規定されており、これを超える長さのデータを送りたい場合は複数のフレームに分割して送信し、受信側で元のデータに組み立てる処理を行う。時代が下り通信速度が高まるに連れて1500バイトでは非効率になってきたため、ギガビットイーサネット以降は数千バイトを一度に送れる「ジャンボフレーム」技術が採用されている。

初期の規格

最初のイーサネット仕様は1980年に米ゼロックス(Xerox)社(当時)と米ディジタル・イクイップメント(DEC:Digital Equitment Corporation)社(当時)によって考案され、1983年に電気通信の標準化団体の一つであるIEEEの802.3委員会によって標準化された。最も狭義には(あるいは歴史的な文書などでは)これを指してイーサネットと呼ぶ。

この初期の標準では、非シールド撚り対線(UTPケーブル)を用いる規格として「1BASE5」と「10BASE-T」の二つが、同軸ケーブルを用いる規格として「10BASE5」「10BASE2」「10BROAD36」の三つが、光ファイバーを用いる規格として「10BASE-F」(FL/FB/FP)が策定された。1BASE5は通信速度1Mbps、他は10Mbpsである。実際に普及したのはほぼ10BASE-Tのみだった。

(2024.6.16更新)

イーサネット用語辞典

初期のEthernet規格

名称ケーブル距離配線機器数規格
1BASE5 (StarLAN)UTPカテゴリ3以上250mスター型IEEE 802.3e
10BASE5 (Thick Ethernet)50Ω同軸ケーブル(直径9.5mm)*1500mバス型100IEEE 802.3
10BASE2 (Thin Ethernet)50Ω同軸ケーブル(直径5mm)*2185mバス型30IEEE 802.3a
10BASE-TUTPカテゴリ3以上100mスター型1024IEEE 802.3i
10BASE-F10BASE-FLマルチモード光ファイバー2km(リピータ-端末間接続)IEEE 802.3j
10BASE-FB(リピータ間接続)
10BASE-FP500mスター型33
10BROAD3675Ω同軸ケーブル(CATV用)3.6kmバス型IEEE 802.3b
*1 Thickケーブル、イエローケーブルとも呼ばれる。直径は正確には0.375インチ(9.525mm)。
*2 Thinケーブルとも呼ばれる。直径は正確には0.2インチ(5.08mm)。

Fast Ethernet規格

名称ケーブル距離全二重規格
100BASE-T100BASE-T2UTPカテゴリ3以上(4線)100mIEEE 802.3y
100BASE-T4UTPカテゴリ3以上(8線)不可IEEE 802.3u
100BASE-TXUTPカテゴリ5以上
100BASE-VGUTPカテゴリ3以上(8線)不可-
100VG-AnyLANIEEE 802.12
100BASE-FXマルチモード光ファイバー(2線)2kmIEEE 802.3u
100BASE-SX550m-
100BASE-BX10シングルモード光ファイバー(1線)40km
100BASE-LX10シングルモード光ファイバー(2線)10km

Gigabit Ethernet規格

名称ケーブル波長距離規格
1000BASE-TUTPカテゴリ5以上-100mIEEE 802.3ab
1000BASE-TXUTPカテゴリ6以上--
1000BASE-X1000BASE-CX2芯平衡STP-25mIEEE 802.3z
1000BASE-SXマルチモード光ファイバー850nm550m
1000BASE-LX1350nm550m
シングルモード光ファイバー
(2芯)
5km
1000BASE-LH50km-
1000BASE-LHA70km-
1000BASE-LHB150km-
1000BASE-ZX1550nm70km-
1000BASE-EX1310nm40km-
1000BASE-LX1010kmIEEE 802.3ah
1000BASE-BX10シングルモード光ファイバー
(1芯)
上り1310nm
下り1490nm
1000BASE-PX10
1000BASE-PX2020km
1000BASE-KX電子基板上の配線-1mIEEE 802.3ap
* 1000BASE-BX10は単に1000BASE-BXとも。
* 1000BASE-Xをすべての光ファイバー系規格を含む総称とする場合もある。