PVST 【Per-VLAN Spanning Tree】
概要
PVST(Per-VLAN Spanning Tree)とは、VLANごとに異なるスパニングツリーを形成する規格。米シスコシステムズ(Cisco Systems)社が開発したもので、同社の製品で利用できる。スパニングツリー(spanning tree)とは、3台以上のネットワークスイッチで構成されるLAN上で円環(ループ)状の経路が形成されフレームが循環し続けてしまうのを回避する制御方式である。スイッチ間で制御情報を伝送し合い、一部の経路を封鎖してネットワークを全体を木構造(ツリー)に再編する。
通常のスパニングツリーはすべてのフレームの送受信に適用されるため、VLANの構成によっては封鎖されたリンクを迂回することで無駄に大きく遠回りすることを強いられ、データ伝送が効率的に行われないことがある。
PVSTはスパニングツリーの構成をVLANごとに行う手法で、あるVLANでは封鎖されているリンクを別のVLANでは通過するといった運用にすることができる。フレームの伝送は効率的に行うことができるが、VLANごとに制御フレーム(BPDU)の伝送が必要なため帯域の消費が大きく、ツリーを構成する際の処理の負担も大きい。
PVST+
オリジナルのPVSTはCisco独自のISL(Inter-Switch Link)を用いるVLANでしか利用できないが、これを標準規格のIEEE 802.1Qでも使用できるよう一部を改変した仕様を「PVST+」という。
スパニングツリーにおける各スイッチの識別符号であるブリッジIDのうち、本来はプライオリティ(優先度)を表す前半の16ビットの後半12ビットを「拡張システムID」に置き換える。これはVLAN IDに相当し、前半4ビットで指定されるプライオリティ値にIDの値を足したものがプライオリティとして使用される。
(2022.1.26更新)