スループット 【throughput】
概要
スループット(throughput)とは、機器や通信路などの性能を表す特性の一つで、単位時間あたりに処理できる量のこと。ITの分野では、コンピュータシステムが単位時間に実行できる処理の件数や、通信回線の単位時間あたりの実効伝送量などを意味することが多い。処理の場合
コンピュータの性能について言う場合は、単位時間あたりに与えられた処理を完遂できる回数を表す。CPUやメモリ、ストレージなど装置の構成や性能、処理内容などが複雑に影響しあって決まるため、単一で単純な指標はない。分野や用途に応じて業界団体などが用意した試験用のソフトウェア(ベンチマークプログラム)を実行し、処理件数を計測して相対的な値として表すことが多い。
通信の場合
通信回線や装置のデータ入出力の性能について言う場合は、伝送路を通じて単位時間あたりに送受信できるデータ量を表す。単位として、1秒あたりに伝送できるビット数である「ビット毎秒」(bps:bits per second)や1秒あたりのバイト数「バイト毎秒」(Bytes/s)、および、これらに大きさを表す接頭辞を付けたもの(Mbps、MBytes/sなど)を用いる。
通信システムやプロトコルなどについて用いる場合は、伝送路自体が全体として運べる理論的なデータ量から、制御データや誤り訂正符号などのオーバーヘッド分を差し引いた、実質的に相手方に伝達されるデータ(ペイロード)の量を表すこともある。
スループットとレイテンシ
処理や伝送の「速さ」はスループットだけでは決まらず、状況によっては一回ごとにかかる遅延時間(レイテンシ)が大きく影響する場合がある。一般に、大量のデータを連続的に扱う場合はスループットが支配的な要因となるが、二者が双方向的に相手からの応答を待って短く何度も繰り返し伝送を行うような系(通話など)ではレイテンシが支配的となることがある。
例えば、高解像度の映像を伝送できる高スループットの衛星回線でテレビ中継を行っても、出演者が回線越しに会話をすると発言ごとに数秒の「間」が生じることがある。これは衛星が遠く電波の到達に時間がかかることによるレイテンシの影響である。
実効スループット (有効スループット)
通信速度や処理能力の尺度の一つで、実際に通信や計算を行ったときの単位時間あたりの処理能力やデータ転送量のことを実効スループット(effective throughput)あるいは有効スループットという。
システムの処理能力の意味では、実際のデータを処理したときの単位時間あたりの処理能力を表し、理論上の最大処理能力(理論スループット)が同じでも、処理させるデータの選び方などの条件によって実効スループットは変化する。標準化されたベンチマークテストなどによって計測される。
通信速度の意味では、理論上実現可能な単位時間あたりのデータ転送量(理論スループット)から、エラー訂正による損失や、プロトコルのオーバーヘッド、データ圧縮による影響などを差し引いた、実効速度を表す。このため、実効スループットは通信環境や転送するデータの選び方などの影響を受ける。特定の環境のもとで実際に大きなファイルを送受信してみて、かかった時間を測って計測される。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
試験出題履歴
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 総務省 東北総合通信局「沿岸海域における効率的なワイヤレスブロードバンドシステムの技術的条件に関する調査検討会 報告書
」(PDFファイル)にて引用 (2010年3月)