マルチギガビットイーサネット 【Multi-gigabit Ethernet】 NBASE-T / IEEE 802.3bz
概要
マルチギガビットイーサネット(Multi-gigabit Ethernet)とは、有線LANの標準規格であるイーサネット(Ethernet)の種類の一つで、通信速度が1Gbpsと10Gbpsの間のもの。2.5Gbpsの2.5GBASE-Tや5Gbpsの5GBASE-Tなどが知られる。イーサネットは安価で取り回しやすく対応機器の多い銅線ケーブル(ツイストペアケーブル)を用いた仕様が広く普及しているが、従来規格では1Gbpsのギガビットイーサネット(GbE)が速度の上限で、10Gbpsの10ギガビットイーサネットは実質的にほぼ光ファイバーケーブル専用となっていた。
2010年代になると無線LAN(Wi-Fi)規格の高速化が進み最高1Gbps以上の仕様が登場したり、光ファイバー回線によるインターネット接続サービス(FTTH)で1Gbpsを超える速度のサービス品目が登場するなど、建物内配線の有線LANが1Gbpsでは物足りない状況が生じるようになってきた。
安価な銅線ケーブルで10Gbpsを達成するのは実用上は困難だったため、GbE用にすでに広く普及しているCat5eケーブルやCat6ケーブルを流用して少しでも高速な通信を可能する規格としてマルチギガビットイーサネットが策定された。現在は2.5Gbpsの仕様と5Gbpsの仕様が策定され、実用化されている。
2016年にIEEE 802.3bz標準が策定され、ツイストペアケーブルで100mまでの距離を最高2.5Gbpsで通信できる「2.5GBASE-T」と、最高5Gbpsで通信できる「5GBASE-T」が定義された。近年ではパソコン用のNIC(ネットワークインターフェース)やネットワークスイッチに対応製品が増えている。
2018年には、電子基板の回路配線を用いて1m以内の距離を繋ぐ「2.5GBASE-KX」「5GBASE-KR」を定めたIEEE 802.3cb標準が策定された。2020年には、車載機器間の通信用に1対のツイストペアケーブルで15mまで通信できる「2.5GBASE-T1」「5GBASE-T1」を定めたIEEE 802.3ch標準が策定された。