プリアンブル【preamble】
概要

“preamble” とは「序文」「前置き」という意味で、通信の文脈では本データの前に置かれる準備信号を意味する。受信側は回線上の信号を常時監視しており、このパターンを検出することでデータ受信の準備を開始する。プリアンブルの主な役割はビット同期(クロック同期)の確立であり、送受信間でタイミングを合わせることで後続データの正確な読み取りを可能にする。
イーサネット(Ethernet)では、10BASE-Tをはじめとする規格において2進数の「10」を31回繰り返し末尾に「11」を加えた64ビット(8オクテット)のパターンが規定されている。このうち、最後の2ビット「11」は「SFD」(Start Frame Delimiter:開始フレーム識別子)と呼ばれ、プリアンブル本体とは区別されることもある。SFDに続いてMACアドレスなどを含むフレームヘッダが送られてくる。
無線LAN(IEEE 802.11シリーズ)では規格の世代によってプリアンブルの構成が異なる。IEEE 802.11bでは「ロングプリアンブル」と「ショートプリアンブル」が規定されており、後者は送信オーバーヘッドを削減するために用いられる。IEEE 802.11n以降では「HTプリアンブル」、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)では「HEプリアンブル」が定義され、OFDMAや多値変調への対応に伴い構造が複雑化している。
移動体データ通信(携帯電話)やBluetooth、ZigBeeなどの無線通信規格においても、それぞれの物理層仕様で特定のプリアンブルのパターンと長さが規定されている。プリアンブル自体は何も情報を伝達せず、長過ぎれば性能の劣化要因(オーバーヘッド)となるが、短すぎれば送受信の同期に失敗する例が増えて安定性の低下要因となる。伝送効率との兼ね合いから規格ごとに最適な設計が求められる。