固定小数点数 【fixed-point number】
概要
固定小数点数(fixed-point number)とは、コンピュータが実数を扱うときの表現形式の一つで、小数点が特定の位置に固定されているもの。数の大きさに関わらず、整数部の桁数と小数部の桁数が決まっている。数値を表すビット列のうち、何ビット目までが整数部で、何ビット目からが小数部かがあらかじめ固定・指定されている形式である。整数は小数点の位置が右端に固定されている特殊な場合の固定小数点数と考えることができる。
これに対し、ビット列全体を、正負を表す符号部、スケールを表す指数部、各桁の数の並びを表現する仮数部の3つに分け、基数(多くの場合2や10)を指数でべき乗した値を仮数にかけて数値を表現する方式を「浮動小数点数」(floating-point number)という。
固定小数点数は浮動小数点数に比べ表現できる値の範囲が狭く、計算の精度が低いが、整数と同じ原理や回路を用いて高速に計算できる。大きさが極端に違う数値の加減算で小さい値の情報が無視されてしまう「情報落ち」が起こらないという特徴もある。
汎用的な数値計算などでは浮動小数点数を用いるのが普通だが、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の座標計算やDSP(デジタルシグナルプロセッサ)の信号処理など、扱う値の幅が決まっており高速性が重要な用途では計算の高速化のために固定小数点数が好まれることがある。
(2023.2.21更新)