Pascal 【Philips’ Automatic Sequence Calculator】
概要
Pascal(Philips’ Automatic Sequence Calculator)とは、主にコンピュータ科学の教育などに用いられるプログラミング言語の一つ。1968年にスイスのコンピュータ科学者ニクラウス・ヴィルト(Niklaus Wirth)氏によって考案された。命名の由来は17世紀の著名なフランスの哲学者ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)。ALGOLの流れを汲む手続き型のプログラミング言語で、構造化プログラミングに適した制御構造(while文、while文、repeat-until文、case文など)や、簡潔で軽量な言語仕様で知られる。基本的な記法は同じALGOL系のC言語などに近く、文と文の区切りにはと同じ「;」(セミコロン)を用い、引数は()で括って列挙する。
制御文の範囲などを指定するためにbegin文とend文で複数の文を括って複合文(コードブロック)を定義できる。複数の処理をまとめて外部から呼び出せるようにするサブルーチンの機構もあり、procedure文で手続き(戻り値なし)を、function文で関数(戻り値あり)を定義できる。
すべての変数のデータ型をコード中であらかじめ宣言して使用する(強い)静的型付け言語で、整数型(integer)、実数型(real)、文字型(char)、論理型(Boolean)、列挙型(type)などを利用できる。
組み込みのデータ構造(複合データ型)として配列、文字列(文字型の配列)、集合型、レコード型(C言語の構造体に近い)などを備える。変数宣言はC言語などと異なり var 変数名:型名; という形式を用い、変数名はカンマ(,)で区切って複数並べることができる。後にGo言語や一部のJavaScript拡張などが似た記法を採用している。
多くのPascal処理系はコンパイラによって実行可能形式に変換する方式を用いており、初期のPascalコンパイラはPascal自身によって書かれたという。ポインタなど低レベル(ハードウェア寄り)の仕様も組み込まれており、教育用を想定しながら実用的なプログラム開発にも使うことができる。
1980年代を中心に大学の情報科学、コンピュータ科学などの課程で教育用によく利用された。パソコン向けの処理系として米ボーランド(Borland)社(当時)の「Turbo Pascal」なども発売され、最初期のMacintosh向け開発環境の標準のプログラミング言語にも用いられるなど一定の人気を博した。
中でもオブジェクト指向についての拡張を施した「Object Pascal」を採用した米ボーランド(Borland)社(当時)の開発ツール「Delphi」(デルファイ)はパソコン向けの開発環境として非常に人気があった。
Delphi (デルファイ)
米エンバカデロ・テクノロジーズ(Embarcadero Technologies)社が開発・提供しているソフトウェア開発環境およびプログラミング言語。元は米ボーランド(Borland)社の製品として知られていたが、2008年に同社の開発ツール部門がエンバカデロ社へ売却された。
開発作業の一部をグラフィックス表示とマウス操作で行うことができるビジュアル開発環境(RADツール)の草分けで、Pascal言語にオブジェクト指向の拡張を施した独自のDelphi言語(以前はObject Pascalと呼ばれていた)によりコードを記述する。当初はWindows専門の開発環境だったが、現在では同じソースコードでmacOS(Mac OS X)やiOSなど向けのプログラムを生成することもできる。