読み方 : ニアショアかいはつ

ニアショア開発【nearshore development】

概要

ニアショア開発とは情報システムやソフトウェアなどの開発業務を、発注元から比較的近距離にある国内の地方都市などの企業や事業所に委託する開発形態。海外企業へ委託する「オフショア開発」と対比される概念で、地理的な近さを生かして人件費の削減と円滑な意思疎通の両立を図る。
ニアショア開発のイメージ画像

日本国内では、東京や大阪など大都市圏に本社を置く企業が、北海道や東北、九州、沖縄といった地方の事業所や開発会社へ業務を委託する形態を指すことが多い。本社が地方拠点を新設する場合と、既存の地方企業へ発注する場合の双方が含まれる。

主な目的は、大都市圏に比べて人件費やオフィス賃料が低い地域を活用した開発コストの削減である。加えて、大都市圏で深刻化するIT人材の不足を補うため、地方の技術者を確保する手段としても利用されている。

地理的な近さによる利点としては、移動に要する費用や時間が少ないことや、時差がないため通常の勤務時間内で打ち合わせや進捗確認が行えることが挙げられる。仕様変更や不具合への対応も迅速に行いやすく、必要に応じて担当者が現地へ赴くことも容易である。国内への委託であるため、言語の壁や商習慣、法制度の違いに起因する認識のずれが生じにくく、為替変動の影響も受けない。仕様書や設計書を日本語のまま共有できることから、海外への委託で生じやすい意図のずれを抑えやすい点も利点である。

一方、人件費が桁違いに安い発展途上国へのオフショア委託に比べれば、コスト削減効果は限定的である。品質や開発の生産性は委託先の技術力や体制に左右されるため、コストの低さだけを基準に委託先を選定すると、期待した成果が得られない場合がある。遠隔地での開発では対面での意思疎通の機会が限られることから、進捗管理や情報共有を円滑に進める仕組みを整備することも求められる。

近年では、高速な通信環境やクラウドサービスWeb会議システムの普及により、地理的な距離による制約自体が小さくなっている。これに伴い、コスト削減に加えて、事業継続計画BCP)対策や災害時のリスク分散を目的に、国内の複数地域へ開発拠点を分散させる動きの一環としてニアショア開発が採用される例も見られる。また、新興国における人件費の上昇によりオフショア開発のコスト優位性が低下していることや、地政学的なリスクへの懸念から、開発拠点を国内へ戻す動きの中でニアショア開発が選択されることもある。地方自治体によるIT企業の誘致策や人材育成の取り組みも、こうした体制作りを後押ししている。

(2026.7.5更新)
 
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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