ペトリネット 【Petri net】
概要
ペトリネット(Petri net)とは、事象(イベント)により離散的な状態間の遷移が起きる離散事象システムの記述や解析に用いられる数理モデルおよび図法の一つ。1962年にドイツの数学者、カール・アダム・ペトリ(Carl Adam Petri)によって考案された。システムの局所的な状態を表す「プレース」(円で示される)と、イベントを表す「トランジション」(矩形または線分)を交互に「アーク」(矢印)で結んだ有向2部グラフである。ある時点で条件が満たされているプレースには「トークン」(黒丸)が置かれ、トークンの配置を「マーキング」と呼び、システム全体の現在の状態を表す。
あるトランジションを指し示すすべてのプレースにトークンが置かれると、トランジションが発火(firing)し、トランジションが指し示すプレースにトークンが移動する。ただし、各アークには非負整数の重みが設定され、トランジションは重みの数だけトークンを集めなければ発火しない。
システムの挙動を分析するには、その構造に従ってプレース、トランジション、アークを図示し、初期状態のマーキングを書き入れる。図を複製して各段階のマーキングを順に書き入れていくことにより、システムが状態がどのように遷移していくかを一連の図として表すことができる。
ペトリネットは複数の独立した要素が引き起こすイベントにより全体の状態が変化する並行分散型のイベント駆動システムをモデル化し、挙動の解析や設計の改良、修正などを行うことができる。機械の設計やソフトウェアの並行処理の分析などに用いられる。
(2023.1.17更新)