CICS 【Customer Information Control System】
概要
CICS(Customer Information Control System)とは、米IBM社のトランザクション管理システム(TPモニタ)。同社の大型コンピュータ(メインフレーム)製品のSystem zシリーズおよび同製品を制御するOS製品であるz/OS上で動作する。銀行の入出金処理のように、一体不可分な複数の処理を一つの単位として監視し、障害などが生じても必ず「すべて成功」か「すべて失敗」のいずれかになるよう制御する方式を「トランザクション処理」という。
CICSは同社システム上でトランザクションの管理や監視を専門的に行う「TPモニタ」と呼ばれるミドルウェア製品の一つである。データベース管理システム(DBMS)として、同社の「IMS DB」や「Db2」を使用できる。システムの処理形態に応じてバッチ処理、オンライン処理の両方に対応する。
同社製メインフレームにより大企業や官公庁などの基幹システムとして利用することを想定しており、大規模処理時の安定性や可用性の高さに定評がある。同社による性能試験では最高で20万トランザクション毎秒の処理を行ったこともあるとされる。障害発生時やメンテナンス時に利用者に意識させず透過的に代替環境へ移行・復帰するといった高度な機能を利用することもできる。
CICSを利用した処理は複数のプログラミング言語で開発することができ、COBOLやPL/Iなどメインフレーム環境で馴染み深い言語のほか、アセンブリ言語、C言語やC++言語、Java(Java EE)などにも対応する。近年ではクラウド対応やWeb対応に力を入れており、SOAPやRESTful API、JSONによるWebサービスの提供や、同社のWebSphereと連携してWebアプリケーションサーバとして稼働させることもできる。
1969年に最初のバージョンが発売されたTPモニタ製品の草分け的な存在で、同社のメインフレーム製品と共に世界各国で金融機関や公共インフラ事業者、官公庁などを中心に採用されてきた。1997年には現在の正式名称「CICS Transaction Server」へ改称され、同時にAIXやLinux、Windows Server向けのCICS互換環境である「TXSeries for Multiplatforms」が提供されるようになった。