エンタープライズシステム 【enterprise system】
概要
エンタープライズシステム(enterprise system)とは、企業や官公庁などで導入・利用される情報システムのうち、特に大規模なものや、(規模によらず)全社で共通して使われる中核的なシステムのこと。業務の中枢を担うコンピュータシステムとして導入されるもので、一般消費者向けソフトウェア製品などと同じ意味での(表面的な)機能や性能、価格だけでなく、拡張性や安定性、可用性、信頼性、セキュリティ、ライフサイクルコスト(TCO)などが重視される。
ERP(Enterprise Resource Planning)のようにパッケージソフトを購入して利用する場合もあるが、特に日本の大企業や公的機関ではシステムインテグレータなどの専門のシステム開発企業にオーダーメイドの業務システムの開発を発注し、独自仕様のシステムを導入することが多い。導入後も日常的な運用・管理やメンテナンスのために専任の部署を設置したり、運用業務を継続的に発注するのが一般的である。
店頭やオンラインでパッケージを購入して自分で導入・利用する個人向けの製品とは異なり、パッケージ製品を購入する場合でも開発元や販売元が受発注や導入に深く関与することが多く、メンテナンスやサポートのための契約を結ぶことも多い。
歴史
コンピュータの発明から間もない1950年代、現在では「メインフレーム」と呼ばれる大型コンピュータの大企業や官公庁への導入が始まった。1960~70年代には「ミニコン」(ミニコンピュータ)「オフコン」(オフィスコンピュータ)などと呼ばれる中規模システムが開発され、中堅・中小企業にもエンタープライズシステムの導入が広がった。
1980年代になるとUNIX系システム(オープンシステム)によるメインフレームシステムの置き換えが流行し、機材一台ごとの規模が縮小するため「ダウンサイジング」と呼ばれた。1990~2000年代にはこの流れにWindows ServerやLinuxで稼働するPCサーバ(IAサーバ)が加わるようになった。
2010年代には、エンタープライズシステムを「オンプレミス」と呼ばれる自社設置・運用から、専門の事業者が運用するデータセンター上の機材やソフトウェアを借り受けて運用する「クラウド」へ移行し、インターネットやVPNなどのネットワークを通じてアクセスする方式が普及している。