ファットクライアント 【fat client】 シッククライアント / thick client
概要
ファットクライアント(fat client)とは、クライアントサーバ型のコンピュータシステムにおいて、利用者が操作するクライアント側に機能の多くが実装されているもの。従来型のシステムをシンクライアントと対比する文脈でよく用いられる用語。もともとクライアントサーバシステムはファットクライアント的な高機能なクライアントを用いる方式で、サーバはデータの保管やクライアントへの提供など最低限の機能に徹し、データの表示や操作(ユーザーインターフェース)、演算や加工など、システムの機能の大半をクライアントソフトによって行う。
この方式ではサーバとの通信が少なくて済み、システムによってはサーバから切り離されたオフライン環境でもある程度の利用が可能となる。また、利用者の手元のコンピュータで実行されるソフトウェアが大半の処理を行うため反応速度が速く軽快に動作する。サーバコンピュータの性能もそれほど要求されず廉価な機種を選択できる。
一方、クライアントコンピュータへの性能の要求は高く、サーバと異なり利用者の数だけ必要なためトータルのコストは嵩むことがある。また、クライアント側のOSやクライアントソフトの導入や更新、入れ替えにかかる作業量やコストも大きな負担となる。クライアント側にストレージ(外部記憶装置)を搭載してプログラムやデータの一時的な保管に用いる場合もあり、用途によってはセキュリティ上の弱点となる場合もある。
1980年代頃まではネットワークや通信回線の伝送速度が低く、クライアント側に大きな比重を置くファットクライアントがほとんどを占めていたが、1990年代になると入出力機能だけの軽量なクライアントがサーバ側のデータや機能を高速回線を通じてリアルタイムに呼び出して処理を進める(極端な場合には操作画面を丸ごと転送する)「シンクライアント」(thin client)が登場した。両方式には一長一短があり、現代ではシステムの特性や要求に応じて使い分けられている。
(2019.1.12更新)