ロックイン 【lock-in】
概要
ロックイン(lock-in)とは、現在利用している製品やサービス、技術などから別の同種のものへの乗り換えや入れ替えが困難な状態のこと。特に、IT業界で特定の企業の製品やサービスなどに依存している状態を「ベンダーロックイン」(vender lock-in)という。今あるものを捨て、同じ種類の別のものに切り替えるのに必要なお金や時間、手間などのことを「スイッチングコスト」(switching cost)という。これが高まると切り替えが困難になり、同じ製品や同じメーカーの製品を繰り返し購入するという選択が好まれるようになる。これを「ロックイン効果」という。
スイッチングコストには金額に換算できるような直接的なコスト以外にも「使い方を覚え直す負担感や面倒くささ」「慣れ親しんだ環境が変わることへの抵抗感や不安感」など心理的な要因が含まれることがあり、見かけのコスト以上に切り替えは敬遠されがちなことが知られている。
IT分野におけるロックイン
ITの分野では、ある製品を別の製品と組み合わせて使うことができるか(相互運用性)、ある製品を別の製品で置き換えることができるか(互換性)がスイッチングコストを大きく左右する。ロックイン効果が強く働くため、各製品分野に寡占的・独占的な大企業が出現している。
例えば、パソコンのオペレーティングシステム(OS)として米マイクロソフト(Microsoft)社のWindowsを使用している場合、他社製品へ切り替えるとこれまで使っていたソフトウェアをすべて購入・導入しなおさねばならないため、一度Windowsを使い始めた利用者はなかなか他の環境へ切り替えられなくなる。
同様にパソコンのCPU(マイクロプロセッサ)市場でも米インテル(Intel)社のx86系プロセッサが広く普及し、ロックイン効果により他社製品のほとんどを駆逐してしまった。しかし、米AMD社はx86向けソフトウェアがそのまま動作するIntel互換CPUを開発し、スイッチングコストを大きく引き下げることに成功した。(かつては他にも互換チップメーカーが存在したため)それだけが理由ではないものの、同社はパソコン市場で一定のシェアを獲得している。