物理削除【physical delete】hard delete
物理削除とは?

通常、単にレコードの削除という場合はこの物理削除を指す。削除コマンドが実行されると、該当データが格納されていた領域は上書き可能な状態に変更され、データベース管理システム(DBMS)からは存在しないものとして扱われる。これにより、以降のデータ検索や抽出の対象から完全に除外される。
対比される概念として「論理削除」(logical delete)がある。論理削除はレコード自体をテーブルに残したまま、削除済みであることを示す識別用のフラグ情報を書き換えることで、アプリケーションの画面上などで非表示にする手法である。物理削除はこのような見かけ上の非表示処理とは異なり、実データを保管場所から取り除く。
物理削除の主な利点は、不要になったデータが占有していた記憶容量をその場で解放できることである。これにより、データ記録用ファイルの肥大化を防ぎ、限られたストレージ資源を効率的に管理することができる。また、テーブル内の総データ量が減少することで、インデックスの再構成や検索処理に要する時間の短縮など、システム全体のパフォーマンス維持に寄与する。
一方、物理削除には誤って実行した場合に取り返しがつかないという危険性が伴う。WHERE句の指定ミスといった操作不備や、プログラムの不具合によって必要なデータを物理削除してしまうと、バックアップデータやログファイルなどを事前に記録しておかない限り、そのデータを元の状態に戻すことは極めて困難である。レコード間に参照関係が設定されている場合、外部キー制約によって削除が拒否されたり、関連レコードも連動して削除されたりする。
実際のシステム開発や運用においては、個人情報などの機密データを完全に破棄して漏洩リスクを下げる目的や、検証用の環境で不要になった一時データを一括して整理する目的などで物理削除が選択される。ただし、過去の注文履歴や変更履歴など、運用の監査証跡を残す必要がある業務システムでは、論理削除を採用するか、論理削除から一定期間経過後に物理削除へ移行する設計とする場合もある。