ファイブフォース分析 【five forces analysis】 5つの競争要因 / 5フォース分析 / 5F分析
概要
ファイブフォース分析(five forces analysis)とは、特定の産業分野(業界)の競争状況を5つの要因に着目して分析する手法。1982年にハーバード大学のマイケル・ポーター(Michael E. Porter)教授が発表した。ある業界における競争要因について、「事業者間の競合関係」「売り手(供給元)の交渉力」「買い手(顧客)の交渉力」という3つの内的要因と、「新規参入の脅威」「代替品の脅威」という2つの外的要因を合わせた5つの観点から分析する。業界全体の収益性や競争環境の構造を明らかにするもので、個別の企業や事業、製品の分析や戦略立案を目的とするものではない。
事業者間の競合関係は、その市場で現在活動する企業および既存製品の競争の激しさで、事業者の数や規模、市場の成長性や成熟度、撤退障壁、製品の多様性やブランド力などが関係する。例えば、成長の乏しい市場で多数の事業者が競合していれば収益性は低くなる。
売り手の交渉力は、原材料や部品などを供給するサプライヤー(流通業界の場合は商品を供給するメーカーや卸)と業界内の企業の間の力関係で、供給品市場の寡占度合いや企業規模、代替品への切り替え可能性、供給元の切り替えコストなどが影響する。売り手の力の強い市場では利益が圧迫されやすい。
買い手の交渉力は、製品の販売先である顧客や消費者との間の力関係で、買い手の数や規模、市場における集中度合い、買い手にとっての購入元の切り替えコスト、情報の非対称性の有無や強さ、価格やコストに対する要求の強さなどが影響する。自動車部品メーカーにとっての完成車メーカーのように、強く大きな買い手に取引が集中する業界では収益を挙げにくい。
新規参入の脅威は、当該業界への新規参入のしやすさ(参入障壁の高さ)で、必要な投資額、製品の差別化要因の多様性(規格品やコモディティでは乏しい)、他業界にない独特の流通や商習慣、法律や規制による縛り、既存ブランドの強さ、学習コストや切り替えコストの大きさ、規模の経済やネットワーク効果の影響などが関係する。新規参入が容易な業界は今後とも競争が強まることが予見される。
代替品の脅威は、他業界の製品によって買い手のニーズが満たされるようになり業界全体が打撃を受ける状況で、代替品の満足度、代替品への切り替えコスト、コスト的優位性や費用対効果、代替不可能な要素の有無や大きさなどが影響する。技術の進歩で現れた新しい製品カテゴリーが既存製品を置き換えて普及する例が多く、スマートフォンが携帯音楽プレーヤー市場のほぼすべて、パソコンや家庭用ゲーム機、固定電話機・回線市場の一部を代替した事例がよく知られる。