労働者派遣
概要
労働者派遣とは、ある事業者が労働者を別の事業者の事業所に勤務させ、その事業者の管理監督者の指揮命令により労働させること。日本では労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)による規制を受ける。派遣元が雇用あるいは登録した労働者を、企業などとの契約に基づいて派遣し、その事業所で労働させる事業である。以前は派遣元が正規雇用する従業員を派遣する「特定派遣」(届出制)と、派遣先が決まったときだけ雇用する「一般派遣」(許可制)の区別があったが、2018年にこの区分は廃止され、派遣社員の雇用形態によらず許可制の労働者派遣制度のみとなった。
類型
派遣元に正規雇用され、派遣先の有無に関わらず常に雇用された状態にある形態を「常用型派遣」、仕事が無い時には雇用されず、派遣先が決まって勤務している間だけ雇用される形態を「登録型派遣」という。
登録型のうち、一回の派遣契約の期間が30日以内の派遣は「日雇い派遣」と呼ばれ、原則禁止されている。例外として、学生や60歳以上の人、年収500万円以上の人が副業で働く場合、世帯年収が500万円以上あるが本人が主たる稼ぎ手でない場合(親が高収入の実家暮らしの若者など)に限って認められている。
なお、派遣先による直接雇用を前提に、6か月以内の派遣期間のあと、本人と派遣先の双方が合意すれば直接雇用に切り替えられる派遣契約を「紹介予定派遣」という。必ず直接雇用に転換できるとは限らず、転換後の雇用形態も正規雇用に限らない。
制限
派遣労働の対象業務は労働者派遣法で定められ、建設業や警備業などは派遣労働が禁止されている。派遣契約の期間は1年単位で、3年まで延長でき、3年を超えて業務に従事させたい場合は派遣先による直接雇用に切り替えなければならない。
派遣先は紹介予定派遣を除いて、事前に履歴書の要求や面接などを行ってはならない。派遣先が受け入れた派遣社員を別の事業者に再び派遣することは「二重派遣」あるいは「再派遣」と呼ばれ、禁止されている。
業務請負との違い
事業者間で契約を取り交わし、受注者が発注者の指定する業務の遂行を請け負う契約を「業務請負」あるいは単に「請負」という。受注者は人員、施設、設備、資材などを自前で用意して、自社の監督者の指揮に基づいて業務を行い、成果のみを発注元に納品あるいは報告する。
請負契約でも受注者の従業員が発注者の事業所に勤務する場合があり、労働者の勤務形態は派遣に近くなるが、この場合、請負側労働者への指揮命令は請負側の管理者が行わなければならない。発注元の従業員が直接指示を出すのは俗に「偽装請負」と呼ばれる違法行為となる。
IT業界では、情報システム関連業務(開発や保守、サポートなど)を専門の事業者が請け負い、発注側の事業所に勤務して業務を行う「客先常駐」型のサービスがあり、「SES」(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれる。労働者派遣ではないため、必ず受注側の監督者が帯同し、発注者から請け負った業務の指揮命令を自社の労働者に行うことになっている。