マルチキャリア 【multicarrier】

概要

マルチキャリア(multicarrier)とは、無線通信で、周波数などの特性が異なる複数の搬送波を同時に利用して通信を行うこと。また、機器やサービスなどが、複数の通信事業者(キャリア)の通信サービス・通信方式などに対応していること。対義語は「シングルキャリア」(single carrier)。

無線通信方式

無線通信方式についてマルチキャリアという場合は、OFDMなどの変調方式を用いて、ある範囲の周波数帯域に一部が重なり合う複数の搬送波サブキャリア)を生成し、それぞれに信号を変調して多重化する方式(マルチキャリア伝送/マルチキャリア変調)を指す。限られた周波数帯域を有効に使用でき、マルチパス干渉などへの耐性も強いという特徴がある。

マルチキャリア伝送で複数のサブキャリアに分割された周波数帯域を「コンポーネントキャリア」と呼ばれる一つの単位として、さらにこれをいくつも束ねて同時に通信する方式を「キャリアアグリゲーション」(carrier aggregation)という。移動体通信方式の「LTE」や「LTE-Advanced」で用いられている。

端末やサービスの場合

携帯電話端末や携帯電話サービス、移動体データ通信サービスについてマルチキャリアという場合は、複数の異なる通信会社(携帯キャリア/移動体通信事業者)の運営する無線通信網や通信方式、周波数帯域に同時に対応していることを表す。

多くの国では携帯電話規格が当初から統一され、利用者が端末を自分で購入してキャリアと契約する方式が一般的だったが、日本では端末の仕様や通信方式が通信会社ごとに異なるのが一般的だったため、複数社の仕様に対応していることを「マルチキャリア対応」と謳っていた。近年では日本でも規格や方式の統一が進んでいるため、わざわざマルチキャリア対応と表記することは減っている。

マルチキャリアMVNO

大手キャリアの回線網を借り受けて独自に移動体通信サービスを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator仮想移動体通信事業者)の場合、これまではいずれか一社(例えばNTTドコモ)の設備を利用してサービスを提供するのが一般的だった。

近年では複数社(例えばドコモとau)と契約して同時にサービスを提供し、契約者が自分の端末の対応状況などの事情に応じて選択できるようになっているサービスもある。そのようなMVNO事業者およびサービスを「マルチキャリアMVNO」と呼ぶことがある。

(2024.2.6更新)