レイテンシ 【latency】 遅延時間
概要
レイテンシ(latency)とは、機器に対してデータ伝送などを要求してから、実際にデータが届き始めるまでの待ち時間のこと。単位には時間の長さを表す単位(秒、ミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒など)を用いる。分野によっては「ラグ」(lag)「ディレイ」(delay)も同じか似た意味で用いられる。狭義には、ある二者間で信号やデータのやり取りを行う際に、片方が送り始めてから、もう一方に届き始めるまでにかかる時間を指す。最初の信号が伝送路を通過するのにかかる所要時間である。広義には、通信だけでなく、装置やソフトウェアに処理を依頼してから応答が返り始めるまでの待ち時間なども含まれる。
また、相手方に要求を送り始めてから、応答が届き始めるまでにかかる待ち時間を「往復レイテンシ」あるいは「ラウンドトリップタイム」(RTT:Round-Trip Time)という。これは、要求のレイテンシ(片道レイテンシ)、相手方での処理時間、応答のレイテンシの和に等しい。
スループットとの違い
通信や処理の速さを表す指標としては、単位時間あたりに伝送あるいは処理できる信号やデータの量である「スループット」(throughput)も用いられる。例えば、スループットが1Gbps(ギガビット毎秒)の通信回線は、1秒あたり1ギガビットのデータを伝送できる。
スループットが大きいほど、短時間で大量の信号やデータを伝送あるいは処理することができるが、一回の伝送や処理には必ずレイテンシが伴う。スループットとレイテンシは装置や伝送媒体などの特性や構成によりそれぞれ独立に決まり、一方が良好だからといってもう一方も速いとは限らない。
放送・配信のように一方向的な用途の場合にはもっぱらスループットが品質を決定するが、コミュニケーションやゲームのように人間のアクションごとに短い伝送や処理を繰り返す双方向的な用途の場合には、レイテンシの短さが全体の性能や速度、使用感(動作が鈍いか俊敏か)を大きく左右する。
例えば、上空約3万6000kmにある静止衛星を利用して通信を行う場合、電波が地上-衛星-地上と往復する時間だけでも約0.5秒が必要となる。地上局が発信した放送波を受信して視聴するだけなら画質や音質に関わるスループットの方が重要だが、双方向通信で通話や対戦ゲームなどを行おうとすると、互いに相手の行動の度に0.5秒以上のレイテンシが挟まることがストレスとなる。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 四天王寺大学紀要 第68号「ビックデータ及びビックデータの利活用と制度・法整備 (含む個人情報保護)
」(PDFファイル)にて引用 (2019年9月)