サブキャリア 【subcarrier】 副搬送波
概要
サブキャリア(subcarrier)とは、無線通信などで信号を伝送する搬送波を多数生成して一つの搬送波に合成する方式で、構成単位となる個々の搬送波のこと。また、通信業界では自前の設備を持つ大手事業者自らが運営するMVNO事業のことをサブキャリアと呼ぶこともある。副搬送波
電気通信や無線通信、光通信では、伝送したい信号を電気や電波、光の波の属性を連続的に変化させることによって表現する。この信号を乗せる波のことを「搬送波」(carrier wave:キャリア)と呼び、搬送波を信号で変化させる処理を「変調」(modulation)という。
単純な通信方式では信号で変調した搬送波をそのまま送受信するが、複雑な方式では、複数の変調済みの搬送波を用いて別の搬送波を変調して送信する2段階の変調が行われることがある。このような方式を「マルチキャリア」(multicarrier)と呼び、1段階目に変調される搬送波群をサブキャリア(副搬送波)という。
例えば、近年の無線通信でよく用いられるOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)では、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などで変調した多数のサブキャリアを合成して単一の搬送波として送受信する。高速な通信方式ではサブキャリアの数は数百から数千に及ぶこともある。
大手キャリアのサブブランド
携帯電話(移動体通信)業界では、自前の設備を持つ大手の移動体通信事業者(キャリア)が自らMVNOとなって運営する通信サービスをサブキャリアと呼ぶことがある。「サブブランド」の呼称の方が一般的。
移動体通信では、キャリアの持つ設備を借り受けて通信サービスを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)という事業形態がある。キャリアより格安の料金プランや付加サービスなどを提供し、キャリア自身が提供する通信サービスと棲み分けている。
MVNOはキャリアと資本関係にない事業者(独立系通信ベンチャーや他業界の大手企業など)が多いが、キャリア自らが子会社や別ブランドなどの形でMVNOを設立し、自社設備を用いて別の通信事業者として格安SIMなどを提供することがある。これをサブブランドあるいはサブキャリアと呼ぶ。
サブキャリアはキャリア本体のサービスよりも低廉な料金プランを提供する代わりに、付加的な機能やサービスが少なくサポートも簡素であることが多い。独立系MVNOに対抗し、手厚いサポートなどが不要で割安な料金を求める利用者層を獲得あるいは引き止めるという経営戦略上の意義があるとされる。
歴史的に設備や事業主体が本体と分かれていたKDDI(au)の「UQ mobile」、ソフトバンクの「Y!mobile」を指すことが多いが、大手キャリアが自社設備で開始したサブブランドであるNTTドコモの「ahamo」、auの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」を含める場合もある。