エルゴノミクス【ergonomics】人間工学/human factors
エルゴノミクスとは?

エルゴノミクスが検討する対象は機器の形状や構造、操作手順、情報の提示方法、作業空間の構成など、人間との接点全体である。心理学や生理学、認知科学などの知見を横断的に取り込み、人間側の特性に合わせて機器やシステム、環境を最適化する。
ITやコンピュータの分野では、長時間のデスクワークによる身体への負担を軽減する目的でこの考え方が取り入れられている。手の自然な角度に合わせて成型されたマウスや、キーをV字型に配列したキーボードがあり、手首や指の疲労や腱鞘炎の予防を意図した設計となっている。椅子やデスクは骨格や筋肉への負荷を抑える姿勢保持を意識して設計され、ディスプレイの配置や設定、室内の照明なども眼精疲労や頸部・肩部の慢性的な緊張を抑える観点から検討対象となる。
ソフトウェアの操作画面にもこの考え方は応用される。操作階層を減らして認知的負荷を下げる画面構成、誤操作を誘発しにくいボタン配置、確認ダイアログやフィードバック表示による誤操作防止などが例として挙げられる。スマートフォンでは、片手の親指が届きやすい範囲に重要な操作要素を配置する設計や、十分な押し幅を確保するタッチ操作のデザインなどもこれに含まれる。視認性や操作性に関するアクセシビリティへの配慮もエルゴノミクスの観点と重なる領域である。
呼称は地域によって異なり、欧州では “ergonomics” が一般的であるのに対し、米国では同分野を “human factors” と呼ぶことが多い。国際的な標準や学術文書では両者を並記した “human factors and ergonomics”(HFE)という表記も用いられる。研究領域としては身体負担の軽減や作業効率の改善に加え、注意分配や意思決定といった認知処理の特性分析にも対象が広がっており、製品安全規格や操作系設計の国際標準においても参照される。