ユビキタス 【ubiquitous】

概要

ユビキタス(ubiquitous)とは、遍在する、至る所にある、どこにでもある、おなじみの、などの意味を持つ英単語。ITの分野では、世の中の至る所にコンピュータが埋め込まれ、通信ネットワークを介して互いに連携し、人々がコンピュータの存在を意識せずにその利便性を享受できるような社会や情報システムのあり方を表す。

1988年に米ゼロックス(Xerox)社のパロアルト研究所(PARC:Palo Alto Research Center)の主任研究員だったマーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が、社会にコンピュータが溶け込み、いつでもどこでもその機能や能力を活用できるコンピュータの新しいあり方を提唱し、“ubiquitous computing” (ユビキタスコンピューティング)と名付けた。

日本では、1984年に東京大学助手(当時)の坂村健氏が新しいコンピュータの基本設計(アーキテクチャ)を構築するTRONプロジェクトを創始し、その目指す超分散型システムが実現する社会の姿を「どこでもコンピュータ」と表現した。概念的にはユビキタスコンピューティングとほぼ同様で、2000年頃からは氏も積極的にユビキタスの語を用いている。

2000年代前半には、携帯電話やインターネットの急激な普及、コンピュータ応用製品の小型軽量化・低価格化の進行などから、今後の社会の方向性としてユビキタスの概念が注目を浴びるようになった。

「ユビキタスネットワーク」(いつでもどこでもアクセス可能な通信ネットワーク)、「ユビキタス社会」(ユビキタスコンピューティングが実現した社会)などの派生語も用いられるようになった。2004年には日本政府内で「e-Japan戦略」の後継として、「ユビキタスネット社会の実現」を掲げる「u-Japan政策」が総務省の主導のもと開始された(2009年終了)。

もとより抽象的、総論的な概念なこともあり、ユビキタス的な製品やサービスが次々に実用化・普及していくのとは裏腹に、「ユビキタス」という語そのものは2010年代には次第に使われなくなっていった。

しかし、「コンピューティングが偏在し、生活や社会に溶け込む」というコンセプトは様々な分野で受け入れられ、スマートフォンをはじめ、「IoT」(Internet of Thingsモノのインターネット)「センサネットワーク」「M2M」「ウェアラブルコンピュータ」「AR」(Augmented Reality拡張現実感)「スマートハウス」「RFID」など、より具体的な技術や製品、サービスに形を変えて浸透している。

(2019.3.12更新)

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