5G 【5th Generation】 第5世代移動通信システム

概要

5G(5th Generation)とは、2020年代に導入・普及が見込まれている、第5世代のデジタル携帯電話・移動体データ通信の技術規格。スマートフォンIoTデバイスなどが屋外や移動中に通信事業者などのネットワークアクセスして通信する方式を定めている。

2000年代に普及した第3世代(3G)、2010年代に普及が進んだ第4世代(4G)の後継にあたる通信方式である。3GW-CDMACDMA20004GLTEとWiMAX 2のように、これまでは当該世代の技術要件を満たす複数の規格が併存していたが、第5世代では完全に標準規格が一本化され、「5G」が世代名かつ規格名として扱われる。

主な特徴として、高速に大量のデータを送受信できる「高速大容量」(eMBB:enhanced Mobile Broadband)、途切れにくく遅延が短い「高信頼低遅延」(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、単一の基地局が大量の端末を収容できる「多数端末接続」(mMTC:massive Machine Type Communication)が挙げられる。

eMBB (enhanced Mobile Broadband)

前世代の4Gでは無線区間の通信速度下り基地局端末)数百Mbpsメガビット毎秒)、上り端末基地局)数十Mbps程度が一般的だったが、5Gでは下り2Gbpsギガビット毎秒)以上、上り100Mbps以上と大幅に高速化される。

これは光ファイバーによる加入者回線網(FTTH)に匹敵するか凌駕するほどの大容量であり、4Kクラスに及ぶ高精細な動画のリアルタイム伝送やこれを応用した各種のサービステレビ会議やクラウドゲーミングなど)を場所を選ばずに利用できる可能性を秘めている。

URLLC (Ultra-Reliable and Low Latency Communications)

5Gでは従来の移動体無線通信の大きな弱点であった伝送遅延(発信したデータが相手先に到達するのにかかる伝送時間)の大幅な短縮を目指している。

具体的には、無線区間(端末-基地局間)の遅延を1ミリ秒以下に短縮し、伝送符号やアンテナに冗長性を持たせることにより99.999%以上のパケット受信成功率を可能にしている。信頼性が向上し欠落したデータの再送が不要になる効果も合わせ、通信リアルタイム性が大幅に向上した。

遠隔地間で遅延なく大容量の通信が可能になることで、自動運転や機械の遠隔操作、遠隔手術、クラウドゲーミング、テレイグジスタンスといった従来の移動体通信では遅延が大きく難しかった用途への展望が開けると考えられている。

mMTC (massive Machine Type Communication)

5Gでは、機器やセンサーなどをネットワークに大量に接続して遠隔からの制御や計測の自動化を図るIoTInternet of Thingsモノのインターネット)での利用を想定し、基地局が同時に接続可能な機器数を飛躍的に増加させ、機器側の消費電力を削減する仕様が盛り込まれる。

同じ周波数帯で複数の端末が同時に通信できるようにするマルチアクセス(多元接続)技術を高度化し、単一の基地局が数千や数万に及ぶ多数の機器を同時にカバーすることを目指している。スマートフォンのような人間の操作する端末だけでなく機器の遠隔制御装置や監視装置など多種多様な装置を5G通信網に収容できる。

周波数帯

5Gでは特性の異なる二種類の電波を利用する。一つは「サブ6」と通称される従来の移動体通信に近い6GHz以下の周波数帯で、主に3.5GHz帯や4.5GHz帯が用いられる。もう一つは「ミリ波」に近い極めて高周波の28GHz帯で、これまで通信に本格的には用いられてこなかった周波数帯である。

サブ6は従来の無線通信用の電波と特性が近いが、4G携帯電話などで主流の2GHz前後よりも高い周波数帯を使用する。伝送速度を高速化しやすいが端末の消費電力は増大しやすく、基地局のカバーする範囲も狭い。従来よりも高い密度で基地局を設置する必要がある。

一方、28GHz帯は性質が可視光に近く、直進性が強く減衰が大きいため基地局が直接見通せるくらいの近距離でなければ安定した通信は難しい。サブ6に比べ極めて高速な通信が可能で、一つの基地局が多数の端末と同時に通信することも可能なため、駅や繁華街、イベント会場といった多くの人が集まる場所で局所的に用いることが想定されている。

4Gからの移行

5Gでは既存の4G基地局に5Gの無線通信方式(5G NR:5G New Radio)を追加し、通信制御やバックボーン4G用の資源を流用するNSA(non-standalone)方式と、新たに単体の5G基地局を導入するSAstandalone)方式がある。

当面の導入期には端末4G/5G両対応であり、通信事業者が保有する既存の4Gネットワーク資源を活用して徐々にエリアを拡大するためNSA方式での展開が基本となる。いずれ5Gへの完全移行を見越してSAでの展開が進むと見られている。

ローカル5G

5Gは広域に展開する移動体通信事業者(携帯キャリア)による公衆網の他に、大学のキャンパス内や工場の敷地内といった狭い範囲で施設の管理者などが展開することができる「ローカル5G」の仕組みが提供される。

現在のWi-Fi通信網のように、施設の所有者などが施設内での通信のために5G基地局を敷設し、内部ネットワークでの相互の通信インターネットへの接続などに利用することができる。5Gに割り当てられた周波数帯は無線免許が必要なため、専門の通信事業者以外が取得しやすい免許の枠組みが整備されている。

歴史と展望

5Gの技術規格の標準化は国際的な標準化団体の3GPPが担当しており、段階的に標準仕様を発行している。第1段階の5G Phase 1(フェーズ1)は2017年末に主要な仕様が策定され(標準化完了は2018年6月)、対応機器の開発通信事業者による導入の準備が活発化した。

Phase 1はeMBBの実現を主眼としており、URLLCやmMTCの実現は2020年策定のPhase 2や2020年標準化開始のPhase 3で詳細に検討される予定となっている。

2018年末に米ベライゾン(Verizon)社や韓国の複数の大手通信会社(KTなど)が限定的な5Gサービスを開始したと発表し、2019年春にはこれらの事業者が相次いで一般向けサービスの開始を宣言した。日本では2020年3月末に携帯大手3社(NTTドコモ/KDDI・沖縄セルラー/ソフトバンク)がほぼ同時に5Gサービスを開始した。

(2020.10.14更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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