有機ELディスプレイ 【organic electroluminescent display】 OELD

概要

有機ELディスプレイ(organic electroluminescent display)とは、ある種の有機化合物を用いた層状の構造体に電圧をかけると発光する有機EL(エレクトロルミネッセンス)現象を応用した表示装置。コンピュータディスプレイや薄型テレビ、スマートフォンなどの携帯情報機器の画面として利用されている。

ガラスなどでできた基板に有機物の発光体を蒸着し、微細な電極で電圧をかけることで発光させる。赤、青、緑の光の三原色を発する画素を規則正しく並べ、その組み合わせで色を表現する。

発色の方式には、それぞれの色を発する発光体を並べる方式と、白色光を発する発光体を敷き詰めてそれぞれの色のついたカラーフィルタを被せる方式などがある。

液晶ディスプレイなどと同じように、機器を薄い板状にすることができる薄型ディスプレイの一種で、液晶など他方式に比べ、低い消費電力で高い輝度コントラストを得ることができ、視認性、応答速度、薄さ、軽さなどの点で優れた特性を持つ。

また、曲がった面や(プラスチックなどの)柔らかい面を表示面とすることができるなど、他方式では難しい用途や装置への応用も可能とされる。

一方、加工・製造の難しさから低コスト化や大画面化には問題を抱え、2000年代初頭の実用化からしばらくは普及が進まず、2010年代後半になりようやく薄型テレビやスマートフォンなどで液晶に代わり広く採用されるようになってきた。

無機ELディスプレイ (inorganic electroluminescent display)

特定の種類の無機化合物に電圧を加えると発行する無機EL現象を利用する表示装置を無機ELディスプレイという。有機ELディスプレイと合わせてELディスプレイと総称されることもある。

硫化亜鉛や銅などを組み合わせた無機化合物の発光体をガラス基板に蒸着し、100200Vの交流電圧により点灯・消灯する。表示面に柔らかい素材を利用でき、大型化しやすいなどの特徴は有機ELと同様で、発光材料は有機ELより安価である。

しかし、輝度や電力効率が低く、色の再現性が悪くカラー表示が難しい、高電圧の交流電源が必要、寿命が短いなどの欠点が多く、現在まで広く普及するには至っていない。実用化された例としては医療機器のモニタやキャッシュレジスターのディスプレイ装置、スペースシャトルに搭載されたコンピュータ用のモニタなどがある。

有機発光ダイオード (OLED:Organic Light Emitting Diode)

発光ダイオードの一種で、発光材料に有機化合物を用いるもの。有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)と呼ばれる現象を応用した発光素子の一種である。

電子輸送層、発光層、正孔輸送層を層状に重ねあわせた構造になっており、両端から電圧をかけると発光層内で電子と正孔が結合し、そのエネルギーが発光物質を励起させ発光する。この発光物質に有機化合物を用いるものがOLEDである。

液晶などに比べ薄型軽量で低消費電力、高速応答、高コントラストなどの特徴があり、テレビやコンピュータディスプレイ、特殊用途の照明器具などに採用されている。OLEDを利用したディスプレイやテレビを「有機ELテレビ」「有機ELディスプレイ」(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)あるいは「OLEDテレビ」「OLEDディスプレイ」という。

エレクトロルミネッセンス現象 (EL:electroluminescence)

物質がエネルギーにより励起され起こるルミネッセンス(発光)現象の一つで、半導体などに電圧を加えて起きるもののこと。

蛍光体物質が励起源から受け取ったエネルギーを発光して放出することをルミネッセンス(luminescence)という。励起源の種類から、電界により励起するエレクトロルミネッセンス(EL)、光により励起するフォトルミネッセンス(PL:photoluminescence)、電子線により励起するカソードルミネッセンス(CL:cathodoluminescence)に分類される。

ELは発光原理から注入型ELと真性ELに分類されるが、狭義には真性ELのことをELと呼ぶ場合もある。注入型EL(分散型EL)は、電界を印加することにより、半導体内に注入された電子と正孔が再結合して発光する。発光ダイオードなどが注入型ELである。真性EL(薄膜型EL)は、電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心を励起されて発光する。薄膜EL素子などがこれに分類される。

薄膜EL素子は、厚さ0.5mm程度の発光板の面上で、均一・広範囲にわたる発光が可能な点が特徴である。液晶ディスプレイバックライトなどに使われたほか、それ自体を発光体とするELディスプレイも実用化されている。発光体にジアミン類などの有機物を使うものを「有機EL」(organic EL)、硫化亜鉛などの無機物を使うものを「無機EL」(inorganic EL)という。

(2019.8.15更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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