マルチパス 【multipath】 多重波伝播 / 多重波伝送路
送信側から送出された電波が、地形や建物、障害物、上空の電離層などで反射、回折することで、複数の経路を通って受信側で観測される現象である。経路の距離によって到達時間が異なるため、同じ信号を何度も繰り返し受信してしまい波形の乱れや位相のズレなどが生じる。
アナログ信号による映像の送受信(かつてのアナログテレビ放送など)やレーダーによる物体の検知では、位置や動きがわずかにズレた像が複数重なって現れる「ゴースト」(ghost)と呼ばれる現象の原因となる。デジタル信号では波形が崩れて変復調が困難になり、通信が途絶したりエラーが頻発したりする。マルチパスにより受信レベルが変動することをマルチパスフェージング(multipath fading)という。
携帯電話やテレビ放送、ラジオ放送では、周辺にビルの林立する都心部において電波が頻繁に反射して局所的に激しいマルチパスが起きる場合があり、携帯電話の通信エリアの圏外となってしまったり、難視聴対策で有線放送が用いられたりする。
マルチパスを検知したり影響を受けにくくする送受信方式も研究・開発が進んでおり、レイク受信やOFDM(直交波周波数分割多重)などの技術が携帯電話規格や無線LAN(Wi-Fi)、地上デジタル放送などに採用されている。
(2018.9.30更新)