ダイバーシティアンテナ【diversity antenna】
ダイバーシティアンテナとは?

無線通信では、送信された電波が建物や地形で反射・散乱しながら複数の経路を経て受信点に届く「マルチパス」(multipath)が発生する。経路ごとに伝搬距離が異なるため、同一の電波が位相のずれた状態で重なり合い、受信信号が打ち消し合って弱まる「フェージング」(phasing)が生じやすい。位置や姿勢が刻々と変わる移動体通信では特にこの影響が大きい。
ダイバーシティアンテナ構成では、複数のアンテナをそれぞれ異なる位置や角度に配置する。あるアンテナでフェージングが起きていても別のアンテナでは安定して受信できる場合がある。受信装置はこれらの信号の中から最も品質の高いものを選択するか、複数の信号を合成して一つの安定した信号を作り出す。
複数の受信信号の処理方式としては、受信状態の最も良いアンテナの信号だけを採用する「選択合成」、全アンテナの信号を品質に応じて重み付けして合算する「最大比合成」、単純に加算する「等利得合成」などがある。アンテナの構成による分類では、物理的に離れた位置に設置する「空間ダイバーシティ」、異なる偏波特性を利用する「偏波ダイバーシティ」、異なる指向性を持つアンテナを組み合わせる「指向性ダイバーシティ」などがある。
ダイバーシティアンテナは無線通信における標準的な品質向上技術として、携帯電話端末や基地局、Wi-Fiアクセスポイント、車載テレビ受像機など様々な機器に応用されている。現代のスマートフォンには複数のアンテナ素子が内蔵されており、通話やデータ通信、Wi-Fiといった各種通信にダイバーシティ受信が活用されている。
なお、同じく複数のアンテナを用いる「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)は、それぞれのアンテナで別の信号を同時に送受信することで通信速度を向上させる技術であり、ダイバーシティとは目的が異なる。ただし両者は排他的ではなく、現行の移動体通信規格ではMIMOにダイバーシティの概念が組み合わされて運用されることが多い。