ライトアンプリフィケーション 【write amplification】 WA値
概要
ライトアンプリフィケーション(write amplification)とは、SSDなどフラッシュメモリを用いたストレージ装置で、コンピュータが指示した書き込みデータの量よりもメモリ素子に実際に書き込むデータ量の方が増えてしまう現象。また、両者の比率(WA値)。WA値の多寡が装置の寿命に影響する。ハードディスクなどの磁気ディスク装置では書き込み依頼されたデータをそのまま素子に記録することができるため実際の書き込み量との間に差はほとんど生じないが、フラッシュメモリの特性からSSDなどでは装置を長期間使い続けるうちに両者に差異が生じることがある。
フラッシュメモリは記録済みの素子に直に別のデータを「上書き」することができず、また、一回の書き込み動作の記録単位(ページ)よりも消去動作の単位(ブロック)の方がはるかに大きい。例えば、書き込みは4KiBごとだが消去は256KiB単位でしかできないといった制約がある。
このため、不要になったページを消去して再書き込み可能にしようとすると、そのページが属するブロック全体を消去しなければならず、ブロック内にまだ有効なページが残っている場合は別のブロックに移し替える処理をしなければならない。これを「ガベージコレクション」と呼び、未使用の領域が減るに連れて「移し替え」の頻度は増大していく。
こうした処理によって一度のデータ書き込みによって実際に記録される以上のデータが素子に書き込まれる現象をライトアンプリフィケーションという。物理的な書き込み量を依頼された書き込み量で割った比率を「WA値」と呼び、データ圧縮などをしない限り最良の場合で1.0であり、通常はこれよりも大きい。
フラッシュメモリ素子には書き換え回数の上限があるため、WA値が増大すると装置の書き換え寿命が短縮されていくことになる。SSDなどでは素子の書き込み回数がなるべく均等になるように書き込み領域を選択する「ウェアレベリング」や、データをなるべく分散して様々な領域に記録する「ランダムライト」を行っており、これらの処理はWA値を悪化させるトレードオフの関係になっている。
(2024.8.2更新)