ITIL 【IT Infrastructure Library】 ITインフラストラクチャ・ライブラリ
概要
ITIL(IT Infrastructure Library)とは、情報システムの運用・管理業務についての体系的なガイドラインの一つ。イギリス政府商務局(OGC:Office of Government Commerce)が発行している。利用者が情報機器などを使って目的を遂行できる状態を維持することを「ITサービス」と捉え、その適切な維持、管理のための方法論をまとめている。ITサービスの例として、企業内で情報システム部門がコンピュータやネットワークを管理し、従業員が業務に使用できる状態を維持する活動(システム運用)が挙げられる。
ITILは分野ごとに一冊の書籍としてまとめられており、2001年に発行されたITIL V2では「サービスサポート」「サービスデリバリ」の2冊が、2007年のITIL V3では「サービス戦略」「サービス設計」「サービス移行」「サービス運用」「継続的なサービス改善」の5冊が中核となっている。それぞれが数個から十数個のより具体的な要素やプロセスで構成され、解説されている。
ITILの普及を推進するための民間非営利団体としてitSMF(IT Service Management Forum)があり、各国支部がITILの翻訳・出版などを担当している。日本でもitSMF Japanが日本語版を発行している。ITILの知識や技能を認定する資格試験も運用されており、初級から順にファウンデーション(foundation)、プラクティショナー(practitioner)、インターメディエイト(intermediate)、エキスパート(expert)、マスター(master)の5段階の資格に分かれている。
歴史
1980年代、イギリス政府はIT投資に期待した効果がなかなか得られないことから、IT活用の先進事例を調査し、模範的な事例(ベストプラクティス)を収集、政府におけるIT提供の標準として1989年に最初のITILを発行した。
2000年から2001年にかけて「ITIL V2」書籍群が刊行され、日本ではこれが紹介されて広く普及し始めた。2007年には全面的に改定された「ITIL V3」が刊行され、2011年にはV3の小幅な改訂となる「ITIL 2011」が出版された。V2とV3・2011では体系が大きく異なるため実際上はそれぞれ別物として扱う(どちらを指すのか明記する)ことが多い。