GSM 【Global System for Mobile Communications】
概要
GSM(Global System for Mobile Communications)とは、デジタル方式を採用した第2世代携帯電話(2G)の標準規格の一つで、日本など数カ国を除いてほぼ全世界で標準として普及した方式。基地局→端末方向(下り)の通信と逆方向(上り)の通信は周波数による分割(FDD:周波数分割複信)を、基地局と複数の端末の同時通信には時間による分割(TDMA:時分割多重アクセス)をそれぞれ採用している。
すべての通信をデジタル信号の送受信により行うデジタル携帯電話で、音声はデジタルデータに変換され、標準では22.8kbps(フルレート)あるいは11.4kbps(ハーフレート)の音質(アナログ電話回線と同等)で送受信される。拡張仕様のEDGEでは最高28.8kbpsの高音質の通話モードも用意されている。
データ通信は当初の規格では回線交換接続により行われ、標準で9.6kbps(9600bps)、基地局や端末の対応状況により最高で14.4kbps(14400bps)の速度で通信できた。パケット交換方式のGPRSでは21.4~171.2kbps、EDGEでは59.2~473.6kbpsまで高速化された。
使用する周波数帯域は国や地域により割り当て状況が異なるが、主に850MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、1900MHz帯が使用されている。仕様上は400MHz帯や700MHz帯も規格化されている。850/900MHz帯と1800/1900MHz帯の2つに対応したデュアルバンド機など、複数の周波数帯に同時に対応した端末も一般的になっている。
SIMカードの導入
契約先の通信事業者や契約者の識別番号、電話番号などの契約情報をSIMカードと呼ばれる小さなICカードに記録して端末に挿入する方式が採用され、端末本体には加入者や契約についての情報は記録されない。
この仕組みはW-CDMA/CDMA2000など第3世代以降の携帯電話方式でも採用されており、GSMが普及した世界のほとんどの国では日本と異なり携帯電話端末の販売・購入と携帯電話事業者(キャリア)の契約(加入・解約・乗り換え)が完全に分離されているのが一般的である。
歴史
第1世代のアナログ携帯電話では各国がばらばらの規格を採用していたヨーロッパで、第2世代は規格を統一することが合意され、1987年に最初のGSM規格が策定された。ヨーロッパ全域で標準として採用されたことで機器のコストダウンが進むなど普及に弾みが付き、独自規格のPDC(Personal Digital Cellular)を採用した日本など数カ国の例外を除いてほぼ全世界で標準の携帯電話方式として広まった。
日本ではGSM方式の携帯電話サービス自体は提供されなかったが、国際ローミング対応をうたう携帯電話機などを中心に海外で利用することを想定してGSMでの通信に対応しているものが数多くある。
第3世代や第4世代への移行が進む先進国ではGSMによるサービスの終了(停波)が行われ始めた国もあるが、2000年代に入り初期の関連技術が特許切れを迎え機器の価格がさらに下がるなどの事情もあり、途上国などでは根強く利用され続けている。
GPRS (General Packet Radio Service)
GSMの拡張仕様の一つで、データ通信を回線交換ではなくパケット交換により行う方式を定めた規格。通信速度が高速化されているためGSMの第2世代に対して第2.5世代の通信方式とも呼ばれる。
GSM標準の回線交換によるデータ通信はCSD(Circuit-Switched Data)方式と呼ばれ、アナログモデム程度の9.6~14.4kbps(キロビット毎秒)での通信が可能だった。GPRSでは21.4kbpsのパケット伝送路(スロット)を最大8本束ね、理論上は171.2kbpsでの通信が可能となった。ただし、一般的なGSMネットワークでの実効速度は15~40kbps程度であるとされる。課金方式も通信時間に比例する従量制課金に代わり送受信データ量に応じたパケット通信料が採用されている。
EDGE (Enhanced Data Rates for GSM Evolution/EGPRS:Enhanced GPRS)
GSMの拡張仕様の一つで、変調方式に8PSK(8-Phase Shift Keying)を採用してGPRSよりも高速なパケット通信を可能にする規格。第2世代のGSMを元に第3世代に限りなく近い通信速度を実現した意味で第2.75世代などと呼ばれることもある。
59.2kbpsのパケット伝送路(スロット)を最大8本束ね、最高473.6kbpsでの通信が可能となっている。音声通話の音質も改善され、28.8kbps(フルレート)あるいは14.4kbps(ハーフレート)での通話モードが用意された。
関連用語
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他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 独立行政法人国際協力機構(JICA) 国際協力総合研修所「情報通信セクター政策改革と地方通信インフラ」(PDFファイル)にて引用 (2006年12月)