携帯電話 【cellular phone】 mobile phone / ケータイ
概要
携帯電話(cellular phone)とは、電波による無線通信により屋外や移動中でも通話・通信できる、移動体通信システムおよびサービス。また、そのようなシステムで利用者が通話・通信に用いる、持ち運び可能な小型の電話機(携帯電話端末)。当局の認可を受け無線免許を取得した通信事業者が提供する電気通信サービスの一つで、建物などに固定的に設置され、事業者の有線通信網に接続された無線基地局と、利用者が所持している端末の間で無線通信を行う。基地局と電波で交信可能な範囲なら、屋内外・移動中・停止中の区別なく、いつでもどこでも通話・通信することができる。
携帯電話網は基地局および事業者の通信拠点施設を介して一般の加入電話網と接続され、各端末には加入電話と同じ体系の電話番号が割り当てられている。携帯電話間だけでなく固定回線の加入電話(アナログ電話やIP電話)や公衆電話、国際電話などと発着信・通話することができる(フリーダイヤルなど一部利用できない通話先もある)。
データ通信の利用
現代の携帯電話システムでは音声通話だけでなくデータ通信も可能で、SMSなどの文字メッセージの送受信、Web閲覧や電子メールの送受信などのインターネット接続機能・サービスを利用できる。携帯電話端末は小型のコンピュータとなっており、パソコンのようにアプリを導入して使用することができる。
通話機能を持たずデータ通信に特化した通信システムや料金プラン、通信端末(データ通信カードやモバイルルータなど)もあり、携帯電話とこれらを含む総称として「移動体通信」(mobile communication:モバイルコミュニケーション、モバイル通信)の語が用いられる場合もある。
携帯電話端末
単に携帯電話といった場合は携帯電話サービスの加入者が通話・通信のために用いる小型の電話機のことを指すことが多く、日常会話では「携帯」と略されることが多く、俗に「ケータイ」と表記されることもある。手のひらサイズの薄型・軽量の無線通信機で、充電池を内蔵し、標準的には数日から数週間連続して使用(通信可能状態で待機)できる。
筐体前面に液晶画面を備え、通話相手など各種の情報が表示される。固定電話機のように数字や記号の記されたボタンを指で押して操作する端末と、液晶画面がタッチパネルになっており、指先などで触れて操作する端末がある。
内蔵の半導体メモリや外付けのメモリーカードなどに、よく使う通話相手の電話番号と名前、メールアドレスなどを記録しておく「電話帳」機能があり、毎回数字を打鍵しなくても画面上で相手を選択するだけで発信でき、また、着信相手を名前で表示することができる。
携帯電話端末は多機能化が進み、写真や動画を撮影して保存したり電子メールに添付して送る機能や、メモ帳やカレンダー、スケジュール管理、インターネット接続などの機能を備えたものが標準的になっている。
さらに、汎用のオペレーティングシステム(OS)で動作する小型の個人用コンピュータとして機能し、様々なアプリケーションソフトを導入して機能やサービスを追加することができる端末が一般的になっており、「スマートフォン」(smartphone)と呼ばれる。スマートフォンと対比した従来型の通話機能を中心とする電話機を「フィーチャーフォン」あるいは「ガラケー」(ガラパゴス携帯電話の略)などと呼ぶことがある。
携帯電話事業者
携帯電話サービスを提供する通信事業者を「携帯電話会社」「携帯電話事業者」「移動体通信事業者」「携帯電話キャリア」(携帯キャリア、モバイルキャリア、単にキャリアとも)「MNO」(Mobile Network Operator)などと呼ぶ。
日本では1979年に当時の電電公社(日本電信電話公社)が自動車電話を開始したのが始まりで、1980年代の通信自由化でいくつかの新規事業者が参入した。その後、事業の統合や売却が進み、現在ではNTTドコモ、au(KDDI・沖縄セルラー)、ソフトバンクの大手三陣営と傘下のグループ企業に集約された。
近年では、これら大手事業者の通信インフラを借り受けて独自の携帯電話・移動体データ通信サービスを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator)と呼ばれる事業者の参入が相次ぎ、独自のブランドや付加価値を提供したり、割り切ったサービス内容で安さを売り物にするなど、大手にはない特色ある通信サービスや端末、契約プランなどを展開している。
携帯電話の通信方式
携帯電話の通信方式は世代により分類され、1980年前後に最初に実用化されたアナログ伝送方式を第1世代携帯電話(1G:1st Generation)という。いわゆるNTT方式(日本)やAMPS(米)/TACS(欧)、NMT(欧)などが含まれ、いずれも複数端末の同時接続に周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)方式を利用している。
1990年代の第2世代携帯電話(2G:2nd Generation)では音声をデジタルデータに変換して送るデジタル伝送方式に移行し、日本では「PDC」(Personal Digital Cellular)が、日本以外のほぼ全世界では「GSM」(Global System for Mobile Communications)が普及した。複数端末の同時接続に時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)が採用されたほか、デジタル化でデータ通信が可能となった。
1990年代後半には第3世代携帯電話(3G:3rd Generation)が導入され、日欧の「W-CDMA」やアメリカの「CDMA2000」など、符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)による高速なデータ通信が可能な方式が採用された。
2010年代には3Gの通信方式を高度化した「LTE」(Long Term Evolution)が導入され、当初は3.9G(第3.9世代)とされたが、後にこれが第4世代携帯電話(4G:4th Generation)とされるようになった。4GにはLTEを高度化した「LTE-Advanced」が含まれる。
2020年代には第5世代移動通信システム(5G:5th Generation)規格が策定され、サービス導入が進んでいる。この世代から正式に世界統一規格となり、規格名称も「5G」となった。光ファイバー回線に匹敵する高速なデータ通信が可能となっている。