熱暴走 【thermal runaway】
概要
熱暴走(thermal runaway)とは、俗に、半導体チップの動作に伴う発熱で内部の温度が上昇し、正常に稼働する上限を超えてしまい機能を停止すること。高負荷な状態で冷却装置がうまく機能していない場合などに起きる。コンピュータのCPUなどのICチップは動作に伴って発熱するが、回路規模が小さく動作周波数も低ければ、室温で十分に放熱することができ、ある程度の温度で均衡状態となる。
しかし、近年のチップは回路の高密度化や周波数の向上が著しく、処理の負荷を高めると膨大な熱を発するため、冷却装置などで人為的に冷却しなければ際限なく温度が上昇してしまう。定格温度の上限を超えて内部が過熱してしまい、正常に動作しなくなってしまう状態を熱暴走という。
コンピュータ製品は通常の使用では熱暴走しないよう設計されているが、冷却ファンが故障で停止したり、給気口や排気口が障害物やホコリで詰まったり、内部にホコリがたまり空気の流れが悪くなるなど排熱がうまく行われない状態で、高い処理負荷がかかり発熱量が増えると熱暴走する危険がある。
熱暴走が起きるとソフトウェアが停止し利用者の操作を受け付けなくなるため、機器の電源を落とすか再起動しなければならない。内部を室温まで十分に冷却し、冷却機構の不備も取り除けば元通り動作することが多いが、あまりに高温になってしまうと内部の素子や回路が不可逆に損傷し、完全に壊れてしまうこともある。
なお、正式には、温度上昇により環境や装置の特性がより発熱しやすいように変化し、発熱をさらに加速させる悪循環に陥ってしまう現象(発熱のポジティブフィードバック)のことを指し、本来は単なる高温による動作不良を熱暴走とは呼ばない。このような意味での熱暴走は化学反応など様々な分野に見られ、半導体分野でもバイポーラトランジスタの熱暴走がよく知られている。
(2021.11.25更新)