マイクロプロセッサ 【microprocessor】 MPU / Micro-Processing Unit / 超小型演算装置

概要

マイクロプロセッサ(microprocessor)とは、コンピュータにおける演算や制御などの機能を一枚の半導体チップに集積したもの。コンピュータの心臓部であるCPU(中央処理装置)として用いられることが多い。

マイクロプロセッサはメインメモリ主記憶装置/RAM)などに記録されたコンピュータプログラムを一命令ずつ読み込み、その指示に従ってデータの演算や装置間の転送、他の装置の動作の制御をう。

命令セットとマイクロアーキテクチャ

機種ごとに実行可能な命令のコード体系が決まっており、これを「命令セットアーキテクチャ」(ISAInstruction Set Architecture)あるいは単に命令セットという。一方、命令を実行するための内部の具体的な回路構成などの設計を「マイクロアーキテクチャ」(microarchitecture)という。

命令セットが同じであれば同じプログラム実行することができるが、マイクロアーキテクチャ次第で命令の実行速度や消費電力などは異なる。新しい製品ほど効率的に命令を実行することができる。

同じメーカーの同じ系列の製品(プロセッサファミリー)は同じ命令セットを共有しており過去の製品とのソフトウェア互換性を保っているが、世代が下るごとに命令セット拡張マイクロアーキテクチャの刷新をって機能や性能を改善していく。

機能と構造

一般的なマイクロプロセッサの内部は、命令の解釈や他の回路への動作の指示などをう制御ユニット論理演算算術演算う演算ユニットALUArithmetic and Logic Unit)、データの一時的な記憶をレジスタ、外部との通信インターフェース回路などで構成される。

レジスタメインメモリRAM)にはあまりにも大きな速度差、容量差があるため、両者の中間の速度・容量のキャッシュメモリが内蔵されることが多い。画像処理などのために特定の種類の演算処理を高速化する並列演算(SIMDユニットなどを搭載する製品もある。

かつてはチップセットや単体の制御回路、拡張カードなどの形で実装されてきたメモリコントローラやI/OコントローラビデオチップGPU)などの機能も、近年ではマイクロプロセッサの一部として吸収されるようになりつつある。コンピュータに必要な機能を一通り内部に統合したプロセッサ製品は「SoC」(System-on-a-Chip)と呼ばれる。

RISCとCISC

マイクロプロセッサの基本的な設計方針をCISCComplex Instruction Set Computer)方式とRISCReduced Instruction Set Computer)方式に分類する考え方がある。

CISC方式では、単純なものから複雑で高度なものまで様々な種類の命令を用意して、なるべく多くの処理を一つの命令で実行できるようにすることで能力の向上をはかっている。マイクロプロセッサ発明の当初から主流の設計方針である。

一方、CISC方式の限界を乗り越えるべく考案されたのがRISC方式で、命令の種類を絞り、ひとつひとつの命令を単純化して命令長や実行クロック数などをなるべく均等に揃えている。これにより、複数の命令を効率よく同時実行できるようにして性能の向上をはかっている。

時代が下るにつれて、CISC型の製品もRISC型の製品も互いの長所を取り込む形で発展を続けているため、このような区分は実質的な意味を失いつつあるとする指摘もある。

ビット数と動作周波数

プロセッサが一度の動作で演算・転送できるデータ量は決まっており、初期の製品は4ビットだったが、8ビット、16ビット32ビットと技術の進展に伴って拡張され、現在は64ビットの製品が主流となっている。

また、プロセッサ内部の回路はクロック信号と呼ばれる規則的な信号に従ってタイミングを合わせて動作している。この信号が単位時間(1秒)あたりに発振される回数をクロック周波数あるいは動作周波数という。

この周波数が高いほど高速に動作し、現代の製品ではGHzギガヘルツ:毎秒10億回)の単位で表されるものが一般的となっている。

マルチプロセッサとマルチコア

一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載して並列に動作させる構成を「マルチプロセッサ」(multiprocessor)という。高性能な業務用コンピュータなどで採用される。

一方、単体のプロセッサとして独立して動作する「プロセッサコア」と呼ばれる回路群を一枚のプロセッサチップの内部に複数格納し、一枚であたかも複数のプロセッサがあるように動作するものを「マルチコアプロセッサ」(multi-core processor)という。近年では一般的なパソコンスマートフォン向けの製品でも2コア4コアなどの構成がよく見られる。

歴史

マイクロプロセッサが発明される以前は、演算装置制御装置、各種インターフェース回路などは単体の半導体素子や小規模なIC集積回路)を組み合わせて個別に設計・製造されていた。

1971年に米インテルIntel)社が4ビットマイクロプロセッサ「4004」を開発し、初の民生用商用製品として出荷された。以降はコンピュータCPUとしてマイクロプロセッサを搭載し、チップセットなど補助的なチップを周辺に配する構成が主流となっていった。

1978年に同社は8ビットの「8086」を発売し、主に初期の個人向け小型コンピュータマイコン)市場で人気を博した。8086を元に改良していった製品系列は「x86系プロセッサ」と呼ばれ、パソコンや小型サーバなどの市場で支配的な地位を得た。

1980年代には主に業務用コンピュータ向け市場でPOWER/PowerPCSPARC、PA-RISC、MIPS、AlphaといったRISC型の高性能プロセッサが普及したが、その多くは2000年代までにx86系との競争に破れ、主流のコンピュータ製品の市場からは姿を消した。

2010年代になると英ARM社(現在はソフトバンクグループ傘下)が設計し提携チップメーカー各社が製造するARM系のRISCプロセッサスマートフォンタブレット端末などで急激に普及し、この分野での標準的な製品として浸透している。

(2020.1.25更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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