トランジスタ 【transistor】
概要
トランジスタ(transistor)とは、電流の増幅やスイッチの働きをする半導体素子の一つ。単体の素子として様々な電気製品、電子機器に用いられるほか、集積回路(IC)における基本的な素子の一つとして微細なトランジスタが大量に用いられている。いくつかの構造・動作原理のものがあるが、単にトランジスタといった場合は「バイポーラトランジスタ」(bipolar transistor)と呼ばれる種類の素子を指すことが多い。これはN型半導体とP型半導体をN-P-NあるいはP-N-Pの順に互い違いに並べた構造になっている。
この両端のNまたはPに繋がる電極をそれぞれ「エミッタ」(emitter)および「コレクタ」(collector)、間に挟まれた半導体に繋がる電極を「ベース」(base)という。エミッタとベースの間に電流を流すと、エミッタとコレクタの間にその何倍も大きな電流が流れる。
この原理を利用して、エミッタ-ベース間に信号を流してコレクタから増幅された信号電流を取り出したり(増幅作用)、エミッタ-ベース間で微弱な電流のオン・オフを切り替えることにより、エミッタ-コレクタ間で大きな電流のオン・オフを制御することができる(スイッチング作用)。
なお、2つN型でP型を挟んだ構造のものを「NPN型トランジスタ」、2つのP型でN型を挟んだものを「PNP型トランジスタ」という。N型は電荷を運ぶキャリア(担体)が電子、P型は電子の欠落(正孔)という違いがあり、前者の方が移動速度が速いため、NPN型の方が広く利用されている。
また、ソース(source)、ゲート(gate)、ドレイン(drain)の3つの端子を持ち、ゲート端子に電圧をかけることによってソース-ドレイン間を流れる電子または正孔(ホール)の流れを制御する方式のトランジスタを「電界効果トランジスタ」(FET:Field Effect Transistor)あるいは「ユニポーラトランジスタ」(unipolar transistor)と呼び、半導体集積回路などによく用いられる。他にも光信号によって電流を制御する「フォトトランジスタ」(photo transistor)など様々な方式がある。
トランジスタは1948年にアメリカのベル研究所でジョン・バーディーン(John Bardeen)氏、ウォルター・ブラッテン(Walter H. Brattain)氏、ウィリアム・ショックレー(William B. Shockley Jr.)氏の3人の物理学者によって発明された。初期には電子機器における真空管を置き換え、また、テレビやラジオの受信機などにも広く用いられた。